本記事では、ソフトテニスのフォームについて解説しています。
本稿で念頭に置いているのは、フォームを一つずつ切り分けて理解することは、本来できないということです。
ソフトテニスの練習ではフォームを重視することが多いかと思われますが、少し違って視点で考えていきましょう。
ソフトテニスのフォームは分けても分からない!
ソフトテニスの理論として一般的なものは、以下のように分類して、それぞれの打ち方=フォームを指導するものでしょう。
■フォアハンド
→トップストローク・ミドルストローク・アンダーストローク
■バックハンド
→トップストローク・ミドルストローク・アンダーストローク…
もちろんショットの名称がなければ言葉で伝えられませんから、名前は必要なものです。
「トップストロークの威力を上げたいから、今日は高い打点をいつもより多目に練習しよう」。
このように言葉にして分けることで、ショットを整理して考えたり、人に伝えたりできます。
しかし、現実にボールを打つ時に各ショットのフォームを分けて考えると、これは上手くいきません。
例えばトップストロークとミドルストロークは、本来連続していて切り分けられないものです。
「地面から○㎝までがミドルストロークで○㎝以上はトップストローク」などのように厳密に境界線を設けることはできません。
フォアハンドとバックハンドについても、打ち方を分けようとすると同じことが起きます。
「体の利き腕側で打つのがフォアハンド」、「利き手と反対の側で打つのがバックハンド」という程度の分け方はできます。
ですがフォアハンドもバックハンドも、扱うラケットやボールは同じです。
どちらの場合問でも、ラケット面が正確にボールに接触する正しいインパクトが作られれば、ボールは飛びます。
「ソフトテニスの全ての悩みを解消する方法」では、事実として存在する「問題」と、自分の心が生み出している「悩み」を分けて考えることを解説しました。
ソフトテニスのフォアハンドやバックハンドなどの分け方も、言葉として分けられているだけで、別々の実在があるわけではありません。
それを「フォアハンドストロークのテイクバックは…」とか「バックハンドの打点は…」というように別々に考えて意識すると、自らスイングを複雑なものにしてしまいます。
問題自体はシンプルなのにそれを見つめる自分自身が複雑化している状態です。
このような構図はテニスに限ったことではなく、様々な場面で見られるものです。
参考:前衛・後衛に共通する「ソフトテニスが上手くなる」ことの本質とは?
ソフトテニスのショットをシンプルに捉えてみる
自分の意識がショットを切り分け個別にフォームを意識し、それゆえにスイングを複雑化する。このような流れを概観しました。
この問題の解決は実に簡単で「テニスのショットをシンプルに捉える」ということです。
先ほどまでの構図とは反対に「自分で問題を複雑にしないことによる解決」だと言えるでしょう。
「フォアハンド、バックハンド、ボレー、スマッシュ…」とフォームを意識するのをやめること。
そして「すべてラケットでボールを打ってコントロールするという点では同じ」というシンプルな意識を持ちます。
全てのショットを同じようには打てないから、フォームを分けて練習する、という考え方もあるかと思います。
しかしそれぞれのショットの最適な体の動きは、「脳が勝手に(自発的に)学習するもの」です。
脳は繰り返しによって、自然とその運動や思考をより高度に行えるよう自動的に学習してます。
このような脳の学習の仕組みは、テニス上達の理論の前提です。
学校の勉強などのイメージだと、どうしても自分で一つ一つ考えて進める、という感覚があるかと思います。
意識して考えること自体はとても大事ですが「脳が無意識で勝手に学習する」という面を理解しておく必要があるでしょう。
「習うより慣れよ」という言葉の通り、反復練習によって感覚を身につけることが、逐一考えて学ぶより遥かに有効な場合があります。
例えばハイハイしかできなかった赤ちゃんが二足歩行ができるようになるとき、バランスの取り方を一つ一つ識して学んでいくでしょうか?
そうではなくて何度も立とうとしては失敗する、このトライ&エラーによって、脳は自然と最適な体のバランスの取り方を学習します。
私たちが自転車に乗れるようになったことを思い出してみても同じです。
初めて自転車に乗ったときはグラグラして不安定でしたが、繰り返し乗っているうちに、自然と感覚がつかめてきます。
バランスの取り方やハンドル操作のフォームを個別に分けて理解したからではありません。
脳の学習の仕組みや実例に照らすと「テニスは繰り返しボールを打つことで、脳は自動的にそのショットを学習する」という上達のプロセスが浮かび上がります。
脳は繰り返しによって勝手に学習する訳ですから、本来ソフトテニスは繰り返しボールを打てば自然と上手くなります。
上手くならないと感じるのは、フォームを理に適わない形で切り分けて意識するなど、学習を妨げる要因をどこかで作っているからです。
プレーの本質から離れた思考は、プレー中においては抑えるべき雑念です。
繰り返しによる学習を加速するためには、目の前のプレーに意識を向け、ボールに集中して繰り返し練習することです。
ボールへの集中状態を保てば雑念は自然とキャンセルされ、脳はボールコントロールのための体の動きを自動的に最適化してくれます。
フォアハンド、バックハンドなどのフォームは、考える必要もなく自然と習得ができるでしょう。
参考:「ゾーン」への扉が開く!?ソフトテニス上達の1つ目のポイントを徹底分析!
まとめ
●ショットの名称を分けるのはいいが、ボールを打つ時にはフォームを個別に分けない方が上手くいく
●脳は繰り返しによって自動的に学習する性質がある
●ソフトテニスの各ショットの打ち方は「習うより慣れよ」
●二足歩行や自転車などのように、人間に本来備わっている学習機能を使う