本記事では、ソフトテニスが上達する意識の使い方について解説しています。
一般的なソフトテニスの練習では、打ち方を意識するという方法が多いようです。
しかし、ボレーであれストロークであれ、ソフトテニスのプレー向上に大切なのは意識の働きです。
皆さんが正しいと思って行っている方法も、脳の仕組みから考えると非効率な練習方法かもしれません。
ソフトテニスの練習効果を最大化する方法とはなんでしょうか?
「心ここにあらず」とソフトテニス上達の関係
「心ここにあらず」とは日常でも使う言葉ですが、ソフトテニスとは一見繋がりがないように感じられるでしょう。
しかし、心(脳)の働きという面でソフトテニスのプレーに関係しています。
日常の体験とソフトテニスを結び付けると、理論が実感を伴うものとして理解できます。
「心ここにあらず」の状態から、ソフトテニス上達の心の使い方を考えてみましょう。
「会話中に別のことを考えていて、話が頭に入ってこない」。
このような経験は、誰しもあることでしょう。
相手の声は音声として伝わっていますが、内容が伝わってきていません。
この状態が「心ここにあらず」です。
目の前の現実で起きていることよりも、想像の世界に意識が注がれています。
目に光として届いていたり、耳に音声として届いていても、脳が重要な情報としてキャッチしなければ認識できません。
「カクテルパーティー効果」も、脳による情報の選別という意味では類似しているでしょう。
■カクテルパーティー効果
カクテルパーティーで周囲の騒音に囲まれている中でも、会話をする相手の声だけを判別して聞き取ることができる。
このような、感覚器官を通して送られる情報に対する、脳のフィルターの働き。
この例が示すのも、脳が重要だと思う情報のみをキャッチし、それ以外はフィルターしてカットしていることです。
脳のフィルター機能をRAS(ラス)と呼びます。
ラスの働きによって、人間は無意識に情報の取捨選択を行っています。
不要な情報としてカットされ、本人の認識に上がっていない情報をスコトーマと呼びます。
スコトーマは心理的な盲点のことです。
人間の心に盲点があるのは、ソフトテニスのプレー中においても同じです。
脳がキャッチしている情報があれば、キャッチしていない情報もあります。
「情報」は脳にとっては「現実」。
ソフトテニス上達に必要なのは、体を通じて脳に適切な情報を送りこむことです。
参考:ソフトテニスが上手くならない…上達を止めている「スコトーマ」とは?
「心ここにあらず」をやめるとソフトテニスが上手くなる
ソフトテニスは「心ここにあらず」をやめると上手くなります。
つまり、目の前の現実世界から、別のところへ意識を向けるのをやめること。
目の前に存在するものに対しても、脳には認識されていない情報がある。
脳にはフィルター機能があって、心理的な盲点=スコトーマがある。
これが前章で確認してきたことでした。
ソフトテニス上達のためには、脳がプレーに必要な情報をキャッチすることが必要です。
プレー中に別のことを考えていると、会話での「心ここにあらず」と同じように、目の前の情報を受け取ることができません。
プレーにおける目の前の情報とは、ボールの情報(スピード、回転、角度etc…)や、選手の動きの情報(展開)などです。
「フォーム」や「戦術」を頭で考えているとき、プレーから意識が離れています。
フォームなどを考えることは、集中してプレーに臨んでいるように思われがちです。
しかしこれは、プレー以外のことに意識が向いている「心ここにあらず」の状態です。
「プレーについて考えること」と「プレーそのもの」とは違います。
人間にとって考えることは大切ですが、目的に合っていないものは雑念です。
目の前のラリーに意識を集中することで、脳は初めて「技術の向上」や「試合での勝利」に必要な情報をキャッチできます。
プレーに意識を向けなければ、プレーの情報は不要な情報としてカットされることでしょう。
なので、プレーそのものに意識を注ぎましょう。
プレーに意識を注ぐというと実践が難しいため、「ボール」という一点にテーマを設定します。
プレー中はボールだけに意識を集中します。
集中の対象を定めておくことで、意識を今この瞬間にフォーカスできるのです。
ボールへの集中をテーマとするのは、ボールの情報がプレー中に極めて重要なことも理由の一つ。
ソフトテニスはボールのところへ行き、ボールを打つスポーツです。
そのためプレーヤーは、常にボールに合った動きをしなければなりません。
・前衛のボレーやスマッシュは、ボールのコースを予測してあらかじめ動き、ボールに合うスイングをする
・後衛のストロークは、ボールのところへフットワークで移動し、ボールに合うスイングをする
前衛・後衛というポジションに関係なく、ボールに合った動きが大切なことが分かります。
そして、ボールに合った動きをするためには、ボールの情報が不可欠です。
ボールの情報が脳内でカットされないように、プレー中はボールだけに意識を集中します。
人間は一点に集中することで、雑念をキャンセルできます。
ボールに意識をフォーカスすると、脳がボールの情報を正確にキャッチし、最適なフットワークとショットが実現されます。
参考:前衛の奥儀!ボレーの「隠れた技術」とは?【ソフトテニス】
参考:「マニュアル対応」をやめるとソフトテニスが上手くなる!
まとめ
●「心ここにあらず」とは、目の前の世界から別のものへと意識が注がれている状態
●脳には情報のフィルター機能と、カットされている情報=心理的な盲点がある
●プレー中に「フォーム」や「展開」などを考えるのは、プレーから意識が離れている状態
●ボールだけに意識を集中すると、今この瞬間のプレーそのものの情報を脳がキャッチする