本記事では、ソフトテニスの試合で使えるレシーブの戦術を考えてみたいと思います。
ソフトテニスの試合ではサーブ&レシーブが非常に重要です。
ラリーの一球目は、常に自分(または自分のペア)のサーブかレシーブで始まります。
まずはサーブ&レシーブが確実に打てる「技術」を身につけることが不可欠です。
技術面については他の記事でも多く解説していますから、ここでは戦術について考えてみましょう。
ソフトテニスの試合における「戦略」と「戦術」
「戦略」と「戦術」は似ている言葉ですが、どのような違いがあるでしょうか?
ソフトテニスの場合ですから、試合に勝つことを目的として2つの言葉の意味を考えてみます。
ここでは「戦略」と「戦術」を言葉の意味に注目して分けていますが、ソフトテニスのゲームにおいて厳密に線引きをする必要はないと思います。
ソフトテニスの「戦略」
まずは「戦略」。
戦略は、試合に勝つための大局的・長期的な計画のことです。
試合全体を眺めてのゲームプランのようなイメージです。
ソフトテニスの戦略の例を挙げてみましょう。
■ソフトテニスの戦略の例
・序盤で積極的に攻めて、相手にプレッシャーを与えて後半でディフェンスを重視する
・相手のバックハンド側にボールを集めて、チャンスボールを決めるパターンでポイントする
ソフトテニスの試合では、全体の流れが読めることは大切です。
相手の配球のパターンやカウントによって、狙うべきコースも自ずと変わります。
そのため、大局的にゲームが運べると有利になるでしょう。
しかし例に挙げたようなゲームプランは、現実にプレーヤーを相手にすると上手く運ばない場合があります。
相手によって得意なプレー・苦手なプレーは様々です。
戦略に捉われない範囲で、プレーの全体の流れが見つめられるといいでしょう。
ソフトテニスの「戦術」
次に、「戦術」について見てみましょう。
戦術は試合に勝つための方法や手段のことです。
長期的な視点を意味する戦略に対して、戦術はより具体的・短期的なものを意味します。
戦略が試合全体のプランだとすれば、戦術は試合展開に当たるでしょう。
目の前で展開しているラリーで、瞬間的にベストな動きやボールのコースを判断します。
戦術で最も重要なものは「経験」だと思われます。
頭であれこれと考えることではなく、現実にソフトテニスのゲーム形式を何度も経験することが大切です。
インプレー中はボール、プレーヤーともに動き続けますから、瞬間的な判断が必要です。
試合の様々な状況の中でトライ&エラーを積み重ねると、直観的な判断力が養われます。
直観的な判断を前提とした上で、アウトオブプレーで狙うべきコースをイメージしておくことは有効です。
サーブを打つ前、レシーブを打つ前に、狙いたいコースを思い描きます。
そしてラリーが始まってからは、目の前の状況に合わせて直観的な判断に身を任せると良いでしょう。
ソフトテニスの戦術の例を挙げてみます。
■ソフトテニスの戦術の例
・相手前衛がポーチに出てきたのでロブでかわす
・ショートボールを打って相手を揺さぶる
ここでは戦術をラリーが始まる前に思い描く作戦と、目の前の状況に合わせた判断の両方を含めて考えます。
「戦略」と「戦術」の違いについての説明は以上です。
先ほどにも書いた通り、これらの2つはお互いに繋がっているもので、厳密に分けることは難しいと思います。
「長期的な計画」「短期的な方法」くらいにイメージを掴んでおくと、ゲームメイクがしやすいのではないでしょうか。
以下では両者を特に分けず、単に戦術として試合でのレシーブを考えます。
・「戦略」は、試合に勝つための大局的・長期的な計画
・「戦術」は、試合に勝つための方法や手段
・試合全体のゲームプランと、現在の試合展開に合わせた対応のバランスが大切
試合でのレシーブ戦術
ここからは、ソフトテニスのレシーブの戦術を見ていきましょう。
試合でのレシーブコースがメインです。
一番よく打たれるレシーブコースは「後衛前」でしょう。
試合でのラリーは基本的に相手後衛と行われるものですし、最もオーソドックスなコースだと思います。
後衛前を基本のコースとして、今回はそれ以外の選択肢を考えてみたいと思います。
ソフトテニスのラリーの基本は「相手が打たれたくないところに打つこと」です。
相手が楽にラリーできないように「余裕を奪う」こと。
ポイントに直結しなくても、相手プレーヤーが崩れたら試合展開は有利になります。
そのために有効なレシーブコースは以下の4つです。
■レシーブコースの主な選択肢
①ミドル
②ストレートロブ
③ショートクロス
④前衛アタック
状況にもよりますが主にセカンドレシーブで狙ってみると良いでしょう。
コース①ミドル
ミドルはレシーブに限らず、ソフトテニスのストロークで相手を崩しやすいコースです。
ダブルスでは後衛と前衛でコートを2分割するのが基本。
前衛は自分のサイドを抜かれるとほぼ失ポイントになります。
そとためミドルよりはサイドのディフェンスを重視することが多いと思います。
サイドパスに意識が向いていると、その分ミドルのボールは通りやすくなります。
後衛側のレシーブの場合、ミドルは相手後衛のバックハンド側になるので特に有効です。
(相手後衛が右利きの場合。以下右利きを相手として想定します)
コース②ストレートロブ
ストレートロブは相手後衛がサーブを打つ場面で使えます。
前衛がネット前に付いているため、頭の上を越して打つボールです。
ロブを打つ場合はファーストレシーブで狙う方がいいかもしれません。
セカンドレシーブでも打てますが、ネットからの距離が近いとロブの軌道は打ちづらくなります。
■後衛レシーブでのストレートロブ
後衛がレシーブでストレートロブを打つと、相手後衛のバックハンド側のコースになります。
相手を動かした上でバックハンドを打たせる訳ですから、次のボールがチャンスになりやすいでしょう。
前衛が積極的にスマッシュを追えるパターンでもあります。
特に中学生などはプレー歴が浅く、バックハンドの打ち分けができるプレーヤーは少数です。
ロブで走らされた後、正確にバックハンドを打つのは難しいでしょう。
シンプルですが試合で使えるレシーブからの戦術です。
■前衛レシーブでのストレートロブ
前衛側のレシーブの場合、ネット前につくまでの時間が作られるのは大きなメリットです。
前衛はレシーブを打った後にサービスラインで一度止まるのが基本ですが、ロブなら一気にネット前まで詰められます。
レシーブ後そのままポーチに出ることもできます。
ネット前に詰めるショットはアプローチショットと呼ばれ、前衛レシーブはアプローチとしての役割もあります。
攻撃的なレシーブで攻めるのもいいですが、次のプレーに繋げられるような打ち方も覚えておくといいでしょう。
滞空時間の長いショットは相手にも余裕が生まれますが、自分が陣形を整えるためにも使えます。
コース③ショートクロス・ツイスト
ショートクロスは相手後衛、相手前衛のどちらがサーブの場合でも使えます。
■後衛に対するショートクロス・ツイスト
こちら側がレシーバーのとき相手後衛はベースライン近くにいますから、ショートボールは相手を前に動かす形です。
相手後衛を前に走らせるのは、陣形を崩せるパターンです。
ダブル前衛に熟達しているペアは別ですが、後衛が突然ネットプレーをするのは難しく感じられるでしょう。
相手がネット前に付かない場合でも、後ろに下がりながらストロークを打つ展開になります。
ただし、ショートクロスは正確にコントロールをしないと相手のチャンスボールにもなり得ます。
試合で使いたい場合は、練習で技術を磨いておきましょう。
■前衛に対するショートクロス・ツイスト
前衛はサーブの後はネット前まで詰めていません。
レシーブを足元に打つことができれば返球は難しくなります。
ショートクロスで注意したいのは、ボールが浮くと相手のチャンスボールになりかねないことです。
ショート乱打などで練習を積み、要所で使い分けるようにしましょう。
こちらは、2015年山形インカレでの船水颯人・星野 vs 荻原・山本の試合です。
要所で船水選手の巧みなツイストショットが光ります。
レシーブコースの参考になるしてみてください。
コース④前衛アタック
相手前衛の方へボールを打ちこむのが前衛アタックです。
特にセカンドレシーブは相手前衛との距離が近くなるため、止められにくくなります。
またセカンドレシーブ時はコート内に踏み込んでいるため、ボレーをされた場合でもフォローしやすいのも利点です。
アタックを多用するのはお薦めしませんが、必要に応じて使うことは選択肢の一つです。
・レシーブの基本コースは後衛前
・相手を崩して試合展開を有利にするには「相手が打たれたくない所に打つ」
・レシーブコースの選択肢を複数持っておくことで状況に対応しやすくなる
参考:【ソフトテニス×脳科学】サーブ・ボレー・ストローク…コントロール向上の秘策!
参考:前衛を華麗にかわす!試合での後衛ストロークのコツとは?
ソフトテニスの試合戦術の本質とは?
今回は試合でのレシーブの戦術について確認しました。
冒頭にも書いたように、狙いに共通しているのは「相手が打たれたくないところに打つ」ことです。
これはソフトテニスが対人競技であることに由来します。
最後にソフトテニスの戦術の本質的なところをもう一度押さえておきましょう。
ここまで見てきたレシーブコースを、状況に合わせて活用できるようになるはずです。
ソフトテニスの試合戦術は状況によって変わる
自分が会心のショットを打てたと感じていても、相手の予想通りのコースであればポイントには繋がりません。
より大きなゲシュタルトを作るとソフトテニスは上手くなる!でも触れた通り、ソフトテニスのラリーはコミュニケーションにも似て、状況に応じたものである必要があります。
コミュニケーションは双方向のものであり、その瞬間の状況に合ったものです。
ソフトテニスでは同じコースに打っても相手によってその意味合いは変わります。
レシーブでストレートロブを打つのも、状況によってその意味は違ってきます。
相手後衛がバックハンドが得意な場合、そのボールの意味合いは変わるでしょう。
前衛がスマッシュを得意とする場面でも同じです。
本物の戦術が身に付く方法とは?
ソフトテニスの戦術で最も大切なのは「経験」です。
実際にゲームの状況に身を置いて経験することで、直観的な判断力が磨かれていきます。
このことは先ほども触れましたが、締めくくりとしてもう一度ご説明したいと思います。
今回見てきたレシーブの戦術も一つの参考で、本来戦術はシンプルなものです。
前章まででご紹介したレシーブコースも、感覚に任せて使い分けるので構わないと思います。
初心者がソフトテニスの試合をする時にも戦術を使っています。
「短いボールを打とうかな」
「ロブを打って走らせよう」
戦術を難しく考えず、「どこに打つか?」というシンプルなものとして捉えてみてください。
その方がスムーズにラリーを行うことができます。
直観というと曖昧なようですが、私たちの日常生活を支えてくれている重要な働きでもあります。
道で歩いていて人とすれ違う時にも「いつ、どちらに動くのか?」という判断を何となく行っています。
頭で理論的に考えている訳ではなく、過去の経験による直観的な判断です。
このような直観の働きのお陰で、人とぶつからずにスムーズに動くことができています。
今回ご紹介したレシーブの戦術は、試合で一般的に使えるものです。
ですが試合で本当に重要なものは、自分自身で状況を判断し対応する力です。
また冒頭でも触れた通り自分が意図したショットを打つ技術が、試合戦術以上に重要です。
技術は理論を理解することではなく、実践して感覚を身につけるが本質です。
・ソフトテニスの戦術はゲームの状況に合わせて動くこと
・戦術で最も大切なことは「経験」
・様々な試合の状況を経験することで次のプレーの判断能力が上がる
参考:【ソフトテニス】試合に不可欠な「観察力」を身に付ける方法とは?
参考:【ソフトテニスの】脳が自動で戦術を学ぶ!?試合巧者になるプロセス!
まとめ
●ソフトテニスの試合を有利に進めるには「相手が打たれたくないところに打つ」=「余裕を奪う」
●ソフトテニスの戦術で大切なのは経験
●基本となる後衛前レシーブに加えて、コースの選択肢を持っておく
●レシーブで有効なコース
①ミドル
②ストレートロブ
③ショートクロス(ツイスト)
④前衛アタック