本記事では、ソフトテニスの上達理論を「引き算」の発想で考えてみます。
ソフトテニスが上手くなるために不要な物を取り除き、シンプルな方法に落とし込む。
そうすることで脳は上達に必要な情報を高純度で受け取りより効率的に学習を進めます。
ソフトテニスの上達理論を「引き算」でシンプルに
ソフトテニスの上達法を、必要がないものを減らしていく「引き算」の発想でソフトテニス上達法を考えてみましょう。
「自転車にはどうやって乗りますか?」
ソフトテニスの上達法を考えるために、自転車をヒントにしましょう。
私は自転車を例に取ることが多いですが、自転車は誰もが体感として理解がしやすいからです。
■自転車
ハンドルは軽く握り、いつでもブレーキが掛けられるように周囲の動きを予測する。
片方でペダルを漕ぐと反対側のペダルが持ち上がるため、推進力を失わないようにタイミング良く左右交互にペダルを踏みつつ重心を左右にぶらさず常にバランスを取る。
こちらは自転車に乗る時に実際に行っていることとしては間違っていないでしょう。
ではこの説明は自転車の練習をする人にとって有益なアドバイスになるでしょうか?
答えはもちろん「NO」です。
私たちが自転車に乗る時には上のような内容は考えませんし、練習を行う際にも必要がありません。
ではどうすれば自転車に乗れるのでしょうか?
答えは単純で「繰り返し自転車に乗ること」です。
何度も自転車に乗って練習することで自然と乗れるようになります。
反復練習の結果として、効率の良い動きが感覚として身に付くというプロセスです。
ソフトテニス上達の方法論も不要な部分をカットし、上達のために必要なエッセンスだけを抽出しましょう。
ソフトテニスの優れたプレーは基本的に反復練習によって自然と身に付くものです。
上級者の動きは外から見ると複雑なように見えますが、そのような動作も、シンプルな方法の積み重ねによって可能になります。
「足し算」のソフトテニス理論とは?
ソフトテニスの理論には「フォアハンドの打ち方はこう…」「バックハンドはこう…」と、様々なことを意識する方法が多く見られます。
実践するべきことを加えていくことから「足し算」の方法と見ることができるでしょう。
ここでソフトテニスのフォアハンドストロークについてアドバイスされることを足し合わせてご紹介します。
■フォアハンドストローク
フォアハンドは腰を落として軸足を設定、壁を作り、ラケットを早くテイクバック、スイングは腰→肘→ラケットの順番にしならせながら、打つ瞬間だけ力を入れ、ラケットを上に振り抜いてドライブをかけ、フォロースルーは首に巻き付ける。
このようにフォアハンドの動作を一つ一つ頭の中で意識していては、ボールが正確に打つのはまず無理でしょう。
ソフトテニス上級者の動きを外側から見た形ではありますが、それはあくまで説明に過ぎません。
一つ一つの動作を切り分けて考えていては、全体として体のスムーズな連動が使えず、スイングの動作は不自然なものになります。
フォアハンドについての上記のような説明はちょうど自転車の乗り方を言葉で説明するのと同じです。
上手い人の動きについて言葉にしているかもしれませんが、それを意識することが上達に繋がる訳ではありません。
硬式テニスのデータによるとインパクトの時間は1000分の4~6秒程度で、稲妻と同じくらいの一瞬の間の出来事です。
しかもソフトテニスのボールはスピードやコースが毎回変わります。
先ほどのフォアハンドの説明は体の動きだけでも複雑ですが、実際のプレーではさらにボールの動きに対応したスイングが求められる訳です。
「フォアハンド」一つを取っても実践が困難なものを「バックハンド」「サーブ」「ボレー」と、各ショット毎に意識することを求める。
ソフトテニスの各ショットを細かく説く理論は、一見丁寧なようでありながら、プレーを大変複雑なものにしてしまう可能性があります。
ソフトテニス上達法を「引き算」で考えると?
ソフトテニスが上手くなるためには「引き算」。
上手くなるために「余計なことを減らしていく」という発想です。
ソフトテニスのプレー中に行うべきは「ボールに集中する」こと。この一点のみです。
してはいけないこととして典型的なのは、先ほど挙げたようなフォームを細かく意識することでしょう。
上手くなるために何が必要で、何が不要か?
それはあるべき理想の姿からバックキャスト(逆算)することで明らかになります。
私たち人間の現在の行動の基準を決めるのは「ゴール」です。
行き先を決めることによって初めて、そこに至るために必要な物、不要な物が判断できます。
ソフトテニスのスイングはあくまで「ボールコントロール」=「狙い通りにボールを打つこと」を目的としています。
ボールの軌道を決めるのはラケット面とボールが接触しているインパクトです。
目の前にあるボールに意識を注ぐことなしに、ソフトテニスのショットが正確に打てるということはありません。
そこで「ボールに集中する」というただ一点のみをプレー中に実践する方法が導かれます。
前述した「テイクバック」や「腰→肘→ラケットとしなるスイング」は、反復練習の結果として自然と身に付くものです。
人間の脳は基本的に反復練習によって自動的に学習することができます。
ソフトテニスの各ショットはボールだけに意識を集中し、繰り返し練習することで上手くなります。
完成度の高い理論や実践法はシンプルな方へと向かう!
ソフトテニスの理論は完成度が上がるほどにシンプルな方向へと向かうはずです。
もちろん理論的な説明はいくらでも広げることができますが、中心となる方法はシンプルになります。
抽象化とも言いますが、高い視点から物事を見つめて重要な部分だけを選び出して整理します。
そうすることで、様々な場面をカバーすることができます。
ソフトテニスの各ショット「サーブ」「ストローク」「ボレー」「スマッシュ」などに分けられます。
これらは「ラケットでボールを打つ」という視点で見ると同じものです。
利き手側で打つか、オーバーハンドで打つかなどの違いをカットすると、シンプルな本質だけが残ります。
また自転車を例に取ると、自転車は「右カーブの曲がり方」「左カーブの曲がり方」などと分ける必要はありません。
いずれも「自転車に乗る」練習を続けるうちに、体感として何となく掴めるものです。
ソフトテニスのフォアハンドとバックハンドも、頭の中で分けて考えるために、複雑なものになってしまうのだと思われます。
そうではなくよりシンプルな方法を実践しましょう。
ボールを打つという動作をボールだけに集中して繰り返す。
不要な情報をカットすれば脳はソフトテニスのプレーの情報を五感を通じて高純度で受け取り、上達のスピードは格段にアップします。
・ソフトテニスが上手くなるためには「引き算」=「してはいけないことをしない」
・余計な部分がカットされたシンプルな理論は複数の課題を一気に解決するポテンシャルを持つ
・ソフトテニスの実践法はシンプルな方が取り組みやすく、上達しやすい
参考:【ソフトテニス】新発想!全てのショットが同時に上達する方法!?
参考:【ソフトテニス】バックハンドは「体の邪魔をするのをやめる」と上手くなる!
ソフトテニスの意識を「引き算」で考える
前章ではソフトテニスのプレー中の実践法について「引き算」の発想で考えました。
ここからは、ソフトテニスのプレー中の「意識」にフォーカスしていきたいと思います。
集中することで「ノイズキャンセリング」を行う
ソフトテニス上達のポイントは「ボールに集中する」ことです。
ある一点に向けて意識を集中することで、それ以外の思考を抑えることができます。
ソフトテニスのプレー中に重要なのは「目の前で展開しているソフトテニスのプレーそのもの」です。
「フォアハンドのテイクバックは…」と考えることは目の前の現実から離れたいわば妄想。
頭の中にプレーから離れた雑念にまみれていては、優れたパフォーマンスができないことは当然でしょう。
一点に集中して「ノイズキャンセリング」を行いましょう。
ノイズキャンセリングはイヤホンなどに搭載されている機能で、周囲の雑音を低減し静かな音声環境を作り出すものです。
ここではソフトテニスにおいてプレーに必要のない雑念をキャンセルする意味で使っています。
ある対象に意識を注ぐことで、それ以外の雑念は自然とキャンセルされます。
ソフトテニスの場合はラリーを行うスポーツですから集中する対象はボールがベストです。
ボールという一点に集中することを習慣化すると、目の前の状況に対して、体が瞬時に反応します。
捕捉をすると「考える」という行為そのものを否定するものではありません。
むしろ様々なものついて考えることは人間が生きる上で必要なことです。
本稿での意図は、ソフトテニスのプレー中にパフォーマンスを低下させるような余計な思考を雑念と捉え、カットすることです。
イヤホンのノイズキャンセリングも歩行時に周囲の車の音などが聴こえないことは危険ですから、目的に合わせて雑音を減らします。
自分が設定したテーマに合わせて意識をコントロールしましょう。
動物の動きはフォームが綺麗?
ボールという一点に集中することで意識の上から雑念をキャンセルして、パフォーマンス向上を目指す。
このような脳と体の働きは、動物の動きがヒントになると思います。
猫や鳥などの野生動物の動きは日常生活の中で目にすることがあるでしょう。
動物の動きは無駄がなくスムーズです。
猫は人間が近づく瞬時に動き出せるように身構えます。
一定の距離以上に近づこうとすると、軽やかな身のこなしで逃げ去ります。
鳥が空で羽ばたくさまも、いかにも優雅で洗練された動きをしているように感じられます。
集団で飛行する時には乱れなく隊列を組みます。
スムーズで無駄がない動物たちの体の動き。
猫や鳥の動きは「フォームが綺麗」だと言えるでしょう。
しかしフォームが綺麗だからと言って、動物が「一つ一つフォームを意識している」とは思えません。
動物たちは人間に比べると頭の中で考える働きは小さく、今この瞬間だけに意識が向けられているはずです。
ある動作について「フォームが綺麗」だと感じるのは、外側の「形」ではなく優れた「機能」によって起きることだと思われます。
運動の本質は頭で考えることではなく、反復練習によって洗練された身体感覚です。
集中によって意識にスペースを作ろう
「サーブのフォームは…」と考えているとき、頭の中は目の前の現実以外の雑念に溢れている状態です。
「ボールの動き」や「相手選手の動き」といった試合の状況判断に必要な情報をキャッチするためには、不要な情報をキャンセルしましょう。
ボールという一点に集中することで余計な思考が取り除かれ意識がクリアになります。
意識を「部屋」、情報を「家具」に置き換えてみましょう。
皆さんが新しい家具を部屋の中に配置したいと思っているとします。
しかし部屋の中には古い家具が雑然と置かれており、新しい家具を置くスペースはありません。
新しい家具を置くためには、古い家具を取り除かなければなりません。
ソフトテニスのパフォーマンスを向上するためには、現実のプレーの情報を脳がキャッチする必要があります。
ところが、プレー以外のことで意識が埋められていると、必要な情報を取り入れるスペースがありません。
一点集中というシンプルな意識を持つことで、スイングのフォームや戦術(試合展開)が上手くなります。
究極の集中状態「ゾーン」からバックキャストする
スポーツにおける理想的な意識状態「ゾーン」をゴールとして、そこからの逆算でプレーを考えてみましょう。
ゾーンでは集中力が極限まで高められ、体が自動的に動いているかのような感覚になると言います。
ゾーンを理想の状態としゾーンへ至るプロセスとして現在行うことを考えてみます。
するとソフトテニスでスイングの動作を一つ一つ考えることは理想の状態から逆行していることになります。
プロアスリートが最高の状態としているのが「自分が意識的に何かを行っているという感覚が消えた状態」なのですから、そこに向けて近づく方法がレベルアップには効果的でしょう。
ゾーンから考えてみても「シンプルな方法を実践する」「してはいけないことはしない」という、引き算の発想が活かされます。
・ソフトテニスのプレー中はボールに集中する
・一点に集中することで雑念が減りプレーに必要な情報を受け取ることができる
・目の前のプレーに対する集中を高め「ノイズキャンセリング」を行う
参考:「ゾーン」への扉が開く!?ソフトテニス上達の1つ目のポイントを徹底分析!
参考:「モンスター」が目覚める!?睡眠から分かるソフトテニス上達のコツ
まとめ
●ソフトテニス上達に役立つ「引き算」の発想=「してはいけないことをしない」
●フォームを一つ一つ意識することは、自分でスイングを複雑化する
●自転車の「右カーブ」「左カーブ」などは「繰り返し自転車に乗る」ことで全て上達する
●「ボールを打つ」というシンプルな本質だけを抽出することで幅広いプレーがカバーできる
●プレー中はボールだけに集中することでノイズキャンセリングができる
●一点集中により雑念が減ると脳はソフトテニスの情報を高純度で受け取りパフォーマンスが上がる