本記事では、ソフトテニスの上達のコアとも言える「ボールコントロール能力」の向上方法を解説していきます。
ソフトテニス上達の仕組みが分かれば、その仕組みに合った練習を実践することができ、上達する可能性がアップします。
本稿でのキーワードは「フィードバック」と「自動調節」です。
ソフトテニス上達の中心「ボールコントロール」を理解する
ソフトテニス上達の理論を説明するために、まずソフトテニスが上手くなるとはどういうことかを整理しておきます。
ソフトテニスには技術、メンタル、戦術などの要素がありますが、ここではソフトテニス上達を技術が上がることとしておきます。
ではソフトテニスの技術とはなにかと言えば「ボールコントロール能力」と言い換えられます。
「自分が思い描いているボールの軌道を現実に打つことができる能力」のことです。
ボールコントロール能力を磨く方法をソフトテニス上達法として、そのために重要な脳の仕組み、体の仕組みを見ていきましょう。
フィードバックを使えばソフトテニスは上手くなる
ソフトテニスでイメージ通りにボールが打てるようになるには、フィードバックという脳の学習のプロセスが必要です。
ソフトテニスの上級者は、フィードバックの働きを頭で理解していなくても、自然にその仕組みに合った方法で練習しているのです。
フィードバックとは「ある出来事の結果がその原因の側に戻って影響を与えること」です。
一般的には原因によって結果が起こると見ますが、フィードバックの場合は結果の側から原因にアプローチする働きや考え方です。
以下でフィードバックの具体例を見ながら確認してみましょう。
【学校のテストの例】
学校でテストを受けたあとには受験者が行った勉強の成果が点数として返ってきます。
言うならば、勉強が「原因」で点数はその「結果」です。
返ってきたテストの点数によって、どこが理解できていて、どこが理解できていないのかを分析することができます。
テストの点数という結果をデータとして、原因であった勉強の側を改善することができます。
【ペットボトルロケットの例】
ペットボトルロケットの飛距離の実験をしているとします。
「地面に対してどの角度でロケットを飛ばせば、最も飛距離が伸びるのか?」
「ペットボトルロケットは、どのような軌道を描いて飛んでいくのか?」
これらを確かめるためには、何度も実験を行ってロケットの動きを表すデータを集める必要があります。
「角度」や「飛距離」などの記録をもとにすることで、次に発射するための角度などの条件を修正していきます。
このとき、記録された飛距離や軌道という結果(データ)から、原因となる発射角度などを修正することができます。
以上2つの例では、テストを受けた結果から学習することや、ペットボトルロケットを飛ばすことで修正することが示されています。
トライ&エラーや試行錯誤という言葉にも通じるところがあります。ポイントは、結果を受け取ってそこから学び、次へと繋げるという点です。
「打ったボールの情報を脳に送る」のがソフトテニスのフィードバック
先述したように、ソフトテニスが上手くなるためにはフィードバックの働きを使うことが大切です。
ソフトテニスのボールコントロールにおけるフィードバック。
それは「自分が打ったボールという『結果』から自分の体の動きという『原因』を調整し改善すること」です。
ソフトテニスプレーヤーの多くは自分のスイングフォームを改善することに強く意識を向けますが、この方法で上手くなるのは難しいのです。
スムーズな体の動きはもちろん大切です。力を抜いて体が自然な連動をすることで体はよく動き、ナイスショットに繋がります。
しかしフォームはボールに合った動きという関係ができて初めて意味が生まれます。
いかに綺麗なフォームを身に付けても、ラケット面の先にボールがなければ綺麗な空振りです(きれいなフォームでは上達しない?ソフトテニスの正しいフォームの思考実験!)。
自分のショットの結果である「打った後のボール=飛んでいくボール」は、自分の体の動きの結果を示す重要なデータです。
「自分が打ったボール」という情報のフィードバックを常時受け取ること。
これによって「自分がどう打つとボールがどう飛ぶか」という感覚が脳の中で正確に学習されていきます。
打ったボールからの情報を受け取らなければ、自分の動きの結果が脳内で学習されません。
打ったボールの情報を受け取らないのは受けたテストの結果を受け取らないのと同じことです。
改善点が分からないままに次の試験に臨むことになります。これでは修正ができませんよね。
まとめると以下のようなステップになります。
①自分が打ったボールをよく見て脳に伝えることで、脳がボールの軌道を学習する
②脳はショットの原因であるスイングを修正し、次のショットを改善
①、②の繰り返しによって脳が学習し、ボールに合ったスイングが磨かれていく
ショットが上手くいかなかった場合も結果に一喜一憂する必要はありません。
ミスショットも含めてこれから自分のプレーを改善するための一つの情報=データです。
淡々とボールに意識を向けることを続けてください。
後に解説している「自動調節機能」によって体の動きとボールの動きが自然に最適化されます。
参考:前衛・後衛に共通する「ソフトテニスが上手くなる」ことの本質とは?
参考:精密なショットのメカニズム!ソフトテニスは「パターン認識」で上手くなる!
ソフトテニスは体の「自動調節機能」で上手くなる
人間の脳には体に対する「自動調節機能」が備わっています。
脳はこの機能によって、体の連動・バランスなどを本人が意識していない領域で絶えず調節してくれます。
体が勝手に最適な動きをしてくれる機能を、ソフトテニスに活かすことができれば理想的だとは思いませんか?
体の動きは無意識に調節されている
先述した通り脳の自動調節機能は「無意識に」働きます。名前にもある通り「自動的」に働くということです。
「そんな機能があるならばぜひ使いたい!」と思いますよね。
そもそも私たちは日常的にこの調節機能の恩恵を受けています。
例えば何気なく道を歩いている時でも、自然と体のバランスを取りながら動いています。
小さな子供が歩くという動作を身につけるプロセスも意識的なものではなく、無意識の自動的なものです。
赤ちゃんは成長するにつれてつかまり立ちの練習を繰り返し、次第に自分の力で立って歩けるようになります。
トライ&エラーによって体の動きを脳が自動的に学習して調節を行います。
「どう動くとバランスが保てるのか?」
「どう動くとバランスが崩れるのか?」
何度も失敗を重ねながら動きの結果からフィードバックを受け取り、次の動作に向けて脳内で学習が進んでいきます。
脳が自動的に働き体の動きが調節されるのであればこれほど楽なことはありません。
体の感覚的な働きを理解してくことで、ソフトテニスの動きを体に任せる感じがつかみやすくなることでしょう。
ソフトテニスのスイングは体の自動調節に任せる
ソフトテニスにおける自動調節機能は「体が無意識的ににボールに対して最適な動きを学習する働き。また自動化されたフットワーク・スイングなどの動作を行い理想のショットを実現する働き」です。
①繰り返しによって自動的に学習すること
②無意識的な体の動きを行うこと
これらの2つの面が挙げられます。
脳が自動的に学習してソフトテニスが上手くなる。
このように言うと「フォームを意識して練習しても上達しないのに、自動的に上手くなるなんて信じられない!」と思うかもしれません。
実際には自動調節機能を使うからこそソフトテニスが上手くなるのです。
フォームを一つ一つ覚えようとすると、かえって体はスムーズな動きができなくなるでしょう。
ソフトテニスで打つボールは毎回違いますから、毎回違うボールの動きに毎回違う体の動きで合わせる必要があります。
頭で一つ一つのボールに合わせてスイングを調節することはできません。
しかし体(=無意識)に任せることでボールコントロールが可能になるのです。それがトップ選手たちが行っている正確なショットの内側で起きていることです。
私たちは「歩く」、「自転車に乗る」などの日常の動作でも体の自動的な調節機能を使っています。そうでなければ体のバランスを取ることも、カーブを正確な角度で曲がることもできません。
スポーツが上手くなるためには体の働きを活かすことが不可欠であり、体の運動とは無意識の働きによって支えられている領域が大きいのです。
ソフトテニスで「フィードバック」と「自動調節機能」を活用する方法
すでに触れていますが、本章で改めて「フィードバック」「自動調節機能」をソフトテニスに利用するための練習方法を説明しておきます。
ソフトテニス上達のためには、理論を知ること以上に実践によって感覚を身に付けることが重要だからです。
ソフトテニスでフィードバックを受け取り、体の自動調節機能を活かすこと。実践方法はシンプルです。
ボールに意識を向けて打つこと。そしてそれを繰り返すことです。
ボールに意識を向けて集中し、体の自然な反応に任せて打ちます。
ポイントは自分が打ったボールを見ることです。
飛んでいくボールを見ることで脳がフィードバックを受け取りスイングの学習が加速します。
人間は無意識に、自分に近づいてくるものには注意を向ける一方で、離れて行くものにはあまり注意を払わない傾向があります。
これは身を守るために長い年月をかけて備わった防衛本能でしょう。
ですから、自分が打って飛んでいくボールに意識を向けることを実践して習慣化する必要があります。
始めのうちは効果が感じられなくても気にせず、気楽に続けるようにしてください。
ミスショットになってもフォームなどは気にせず、ボールに意識を向けるようにしましょう。「脳にお任せ」くらいの気持ちです。
ボールコントロール技術の脳内での学習は自転車を練習するときのように自動的に進みます。
ボールへの集中状態が習慣化されてくると、脳が勝手にボールの情報を正確にキャッチし、体は自然と最適化されたスムーズな運動を行います。
心地よくプレーをしながら、ボールが狙ったポイントへとコントロールされるようになっていくのです。
参考:脳が最速で学習する!ソフトテニス上達の1つ目のポイント
まとめ
●ソフトテニスの上達は「フィードバック」と「自動調節機能」の活用が必要
●フィードバックとは「ある出来事の結果が、その原因の側に戻って影響を与えること」
●自動調節機能とは「自分で意識することなく、体の動きを常に無意識に調節する働き」
●ボールに集中して打つことで脳が自動的に学習しショットを最適化する
●打った後のボールに集中することでショットの情報を脳が感知し、スイングが自動修正される