本記事ではソフトテニスのフォームについて、言葉と照らし合わせることで理解してみましょう。
「ソフトテニスと言葉に何の関係があるのか?」と思われるかもしれません。
詳しくは本文に譲りますが、これらの2つは多くの点で似ています。
言葉は人間にとって物事の学習の「象徴」とも言えるでしょう。
言葉は多くの人が自然に習得するものであると同時に、構造化されたものだからです。
言葉という身近なものとソフトテニスを比較することを通じてソフトテニス上達に必要なものが見えてくるはずです。
ソフトテニスの正しいフォーム=言葉の文法
ソフトテニスはフォームを中心とした練習が多いと思います。
ソフトテニス関連の書籍を開いても、フォームを解説しているものが多く見られます。
しかしソフトテニスはフォームを中心とした練習方法では上手くなれないと考えられます。
練習でフォームを覚えて上手くなる人もいますが、全体の一握りに留まります。
フォームとソフトテニス上達に因果関係があるのであれば、もっと多くのプレーヤーが上達を実感しているはずなのです。
では、ソフトテニスが本当に上手くなる方法とはどのようなものでしょうか?
それを考える参考にしたいのが「言葉」です。
冒頭でもご説明したように言葉は私たちにとって身近なもので、物事を学ぶ時のヒントになるものです。
ソフトテニスの上達法を言葉との対照で考えていきましょう。
ソフトテニスのフォームと言葉の文法の関係
ソフトテニスと言葉の関係。
本稿では特にソフトテニスの「フォーム」と言葉の「文法」を照らし合わせて考えていきたいと思います。
意外に思われるかもしれませんが、これらはよく似ています。
「フォーム」と「文法」の2つに共通しているのは、どちらも正しい形を表していることです。
結論を言えばソフトテニスも言葉も形を覚えることで上手くなるのではありません。
これらのスキルの獲得に必要なのは「感覚」です。
反復練習によって感覚を磨くと、結果として綺麗な形が身に付くという流れです。
ソフトテニスが上手い人のフォームが綺麗ですよね。
フットワークもスイングも滑らかに感じられます。
言葉も特に母国語は流暢に話すことができます。
正確な語順で流暢に次の言葉を繋ぐことができます。
ソフトテニスも言葉も高いレベルで習得されていると、形が整っているという特徴が見られます。
「上手い人のフォームが綺麗なのだから、やはり上達に必要なのでは?」と思われるかもしれません。
しかしこれは真逆です。本当はフォームを覚えるとソフトテニスの上達が難しくなるのです。
ソフトテニスが上手い人はフォームが綺麗ですが、それはフォームを意識して覚えたからではありません。
反復練習によって体を動かす感覚が磨かれ、それが外から見ると綺麗なフォームに感じられているだけです。
言葉の例から考えてみましょう。
私たちが日本語を流暢に話せているのは、文法を覚えたからではなく感覚が身についているからです。
先に言葉があって、後から調べてみると日本語の語順や言葉の種類に法則が見つけられた。
文法はそのような後付けの理論です。
日本語を母国語とする人は会話ができ、そして読み書きもできてから、初めて日本語の文法的な知識を学びます。
「名詞」「動詞」などの識別能力は、会話の能力には関係がありません。
これは小さな子供が文法知識なしに会話ができることからも分かります。
ソフトテニスも言葉と同じです。
ソフトテニスの技術はフォームという外側の形を覚えることによって身に付くのではありません。
技術の本質は、繰り返し練習を行うことで身に付く「感覚」です。
確かにソフトテニスが上手い人の動きはスムーズで綺麗ですが、これは上手くなるための原因ではありません。
スムーズな動きを後から調べてみて、外側の形を後から説明したのがフォームです。
フォームを覚えたから動きが身についた訳ではありません。これは因果関係が逆転した説明です。
練習を通じて感覚が磨かれて動作が最適化され、結果として綺麗なフォームが身に付きます。
ソフトテニスのフォームの「本質」
ソフトテニスの「フォーム」は上手くなるための「原因」ではなく「結果」です。
人間の脳は繰り返しによって自動的に学習する性質があります。
練習を繰り返すことで効率の良い体の動きが感覚として身に付き、それが結果として綺麗なフォームになります。
この因果関係についても、言葉と照らし合わせると実感が湧きやすいでしょう。
言葉の文法は言葉の習得の「原因」ではなく「結果」です。
先に言葉がまずあって、それを後から調べてみると文法というパターンが見られるという順番です。
ソフトテニスもプレーが先にあって、フォームという理論は後です。
フォームは効率の良い体の動きについての後付けの理論だったのです。
文法を覚えた外国語はスムーズには話せずカタコトになりがちです。
言葉の運用能力を高めようと思えば、母国語のように感覚を磨くことが必要です。
ソフトテニスも形を覚える練習をすると上手くいきません。
文法を覚えただけの外国語のように、形だけを真似したカタコトな動きになってしまいます。
ソフトテニスの上達に違いが出るのは、才能の差ではなく練習方法の違いです。
上級者と同じように感覚を磨く練習を行えば、ソフトテニスは誰でも上達します。
フォームから自由になるとソフトテニスが上達する!
ソフトテニスのフォーム(打ち方)は後付けの説明であることを確認しました。
上達するために本当に大切なのは、そのようなフォームの内側にある感覚を身につけることです。
ここからは、感覚を磨きソフトテニスが本当に上達する方法を理解していきましょう。
「フォーム=文法」という今回のテーマに即して言うならば、母国語を覚えるようにソフトテニスが上達する方法です。
言葉の学習とソフトテニスの上達
私たちが母国語である日本語を身につけたプロセスを考えてみましょう。
身につけたと言っても、日本語を必死になって勉強した訳ではありません。
周囲の人が話している会話を聴き、自然とその音声を真似して発生を繰り返す。
これを繰り返すうちに自然と言葉が話せるようになっていきます。
脳は繰り返しによって神経回路のネットワークを作り、自動的に学習する仕組みを持っています。
適切な刺激が与えられれば技能は自然と磨かれていくものなのです。
日本語を見聞きすることで脳内に大量のデータが集められ、自然と言葉のパターンを習得していきます。
繰り返しによって感覚が身に付いていくのです。
ソフトテニスの上達も基本的な仕組みは言葉の場合と同じです。
脳内に情報が入力されると自然と脳がそのパターンを学習し、ソフトテニスが上達します。
これはフォームや戦術について考えることとは違います。
大切なことは、脳がソフトテニスのプレーそのものの情報を正しくキャッチすることです。
脳に情報が送り込まれれば、自然とソフトテニスのプレーが学習されます。
感覚としてソフトテニスを学ぶ練習方法
ではどうすれば脳がソフトテニスの情報をキャッチできるのでしょうか?
この方法は単純で「今この瞬間のプレーに集中する」ことです。
頭の中であれこれと考える必要はありません。
脳は体を(五感)を通じて外の世界の情報を得ているため、意識を今に向けるだけでその情報をキャッチします。
ただしプレーに集中と言っても漠然としていますから、集中の対象を持っておきます。
ソフトテニスで集中の対象とするのは「ボール」です。
ボールという一点に集中してプレーすることで、五感を通じたプレーの情報を脳がどんどん学習します。
硬式テニスのデータによれば、インパクトの瞬間は1000分の4~6秒という極めて短い時間の出来事。
またソフトテニスで打つボールはスピードやコースが毎回違います。
コンマ数秒のインパクトの瞬間に、毎回違うボールの動きに合わせてラケットをスイングする。
これは一つ一つのフォームを覚えてできることではありません。
ボールをよく見て脳にその情報を送りこみ、体の感覚に任せてナチュラルなスイングを行います。
今回のテーマである言葉との比較で考えてみましょう。
目の前で展開する会話には、助詞や助動詞などを気にしながらではとても対応ができません。
言葉もソフトテニスのボールのように毎回変わります。
全く同じフレーズでのやり取りはまずありません。
生まれて初めて出会う言葉の組み合わせに対して、私たちは自然に言葉を返してコミュニケーションを行うことができます。
日本語で言えば、膨大な日本語の体験によって培われた経験によってその感覚が身に付いています。
ソフトテニスであれば、何度もボールに集中して打つことで、初めて見るボールであっても柔軟に対応することができます。
プレーを個別に覚える必要はありません。
それは母国語を覚えた時のように、脳が自然と学習してくれるギフトのようなものです。
参考:脳が最速で学習する!ソフトテニス上達の1つ目のポイント「集中」
参考:試合で圧倒的な強さを誇る「ソフトテニスネイティブ」になる練習法!
まとめ
●ソフトテニスのフォームは言葉の文法と近い性質がある
●言葉の文法が後付けの説明であるように、ソフトテニスのフォームは後付けの説明
●毎回変わる状況に対応するためには経験に基づく感覚が不可欠
●感覚を磨く練習をすればソフトテニスが上手くなる