本記事では、ソフトテニスの目標達成に役立つ意識の働きを解説します。
【プレー編】では「今ここ」と「ここではないどこか」の2つの概念を、ソフトテニスのプレーのパフォーマンスを上げるという視点で解説しています。
本稿ではより広い視点で「目標を達成するために、『今ここ』『ここではないどこか』とどう向き合うべきか?」を考えてみましょう。
目標達成のための「今ここ」「ここではないどこか」
「今ここ」とは、今この瞬間、自分が感じている世界のことです。
「ここではないどこか」とは、今ここ以外のあらゆる世界。過去や未来、目の前の空間から離れた世界です。
本稿ではこれらの2つを目標達成という視点で考えます。
目標達成は「自分が思い描く未来を実現する」ということで、人間の活動そのものと言ってもいいかもしれません。
日々の生活も、未来に向けて行動を引き起こすものだからです。
これまでは過ぎ去った時間で、人間が生きられる時間はこれからだけ。
未来に設定した目標に近づく方法論を身に付けることは大切です。
人間の心理と「今ここ」「ここではないどこか」の関係
人間はどのような今この瞬間の状況にあっても、その外側にあるどこかを想像することができます。
何かを成し遂げても、常にもっと多くのものを望むことができるために際限がない。
その意味では、何かを達成することで満たされるのではなく、自分の心が今この瞬間満たされることが大切です。
しかしここで問題があります。
目の前の今この瞬間だけを生きるというだけでは、本当に充実した時間が過ごせるとは言い難いのです。
以下の例について考えてみてください。
ある日、Aさんの金融資産が400万円から300万円になりました。
同じ日に、Bさんの金融資産は100万円から110万円になりました。
AさんとBさんのどちらが幸せだと思いますか?
この問いに対しては「Bさんが幸せだ」と答える人が多くなるようです。
しかし考えてみると分かるように、資産の量はAさんが300万円、Bさんが110万円でAさんの方が多い。
つまり上記の二人の例から、人の心は持っている物の「量」より「変化」に反応する性質があると考えられるのです。
今日より良い明日を思い描き、日々変化していく方が、今この瞬間も充実感を感じやすいと言えるでしょう。
今目の前に存在しない世界=「ここではないどこか」を想像できることは、人間が手に入れた重要な能力です。
人類が火をおこし、空を飛び、宇宙にまで到達したのは、目の前にはない世界を想像し、そのイメージに向けて行動したからです。
人間の可能性を開くのは想像力=イメージの働きが鍵となるでしょう。
「今ここ」と「ここではないどこか」の間にあるジレンマ
ここまでの「今ここ」と「ここではないどこか」についての話には、あるジレンマがあります。
ここではないどこかを想像するがゆえに、今ここに対する不満を抱く。
今ここを生きるがゆえに、未来の可能性を見つめず、変化が起こすことができない。
つまり、一見すると相反する価値観が一人の人間の中に共存していると考えられるのです。
このジレンマを解決するには、「今ここ」と「ここではないどこか」の両方をバランス良く、自由に行き来することです。
今この瞬間に意識を向ければ、仮想の自分と今の自分を比較して思い悩むことはありません。
未来の目標をイメージすれば、脳はその実現のために最大限働き、今この瞬間を活き活きと生きることができます。
参考:正しい練習のマインド!ソフトテニスが上手くなる「農耕型」とは?
ソフトテニスの試合目標を達成する
本章では、ソフトテニスにおける「今ここ」と「ここではないどこか」の位置づけを考えてみます。
「ここではないどこか」から先に見てみましょう。
ソフトテニスの「ここではないどこか」=「目標設定」
ソフトテニスの「ここではないどこか」を目標設定として考えてみましょう。
目標設定は、旅行に行くときの目的地の設定に似ています。
旅行は目的地がなければ、持ち物も、移動手段も決めることができません。
人生における目標も同じです。
目標がなければ今行うことは決められず、現在地の周辺に居続けることになります。
目標は遠ければ遠い程今の自分とのギャップは大きくなり、そのギャップが変化を起こすエネルギーを引き出します。
ソフトテニスで自分の可能性を引き出すためには、大きな目標を設定することが必要です(ソフトテニスが上手くなる「起爆剤」とは?)。
例えば現在地区予選で負けている人が、「インターハイ出場」という目標を掲げたとしましょう。
もしこれが「地区予選突破」のような身近な目標だと、「今の自分のまま変わらない」というメッセージを脳に刷り込むことになります。
目標は常に現状の外側、遠ければ遠いほど良いです。
目標を達成するためには、理想の自分が現在あるべき心地よい自分だというエフィカシー(自己能力の自己評価)を持ちます。
脳は一つの整合性を持つ世界しか維持できません。
イメージと物理的な現実の現実の間にギャップがあれば、脳はどちらか一方しか選べません。
「自分はインターハイに出場することが相応しい人間だ!」という高い自己イメージを維持すれば、イメージの自分を実現する道を脳は勝手に選びます。
ソフトテニスの「今ここ」=「自己観察」
先ほどの「インターハイ出場」という目標が達成できたとしましょう。
目標へと向かう過程も目標の達成も自分にとっての喜びであり、実践するべきことだと思います。
しかし、全てが自分の思い通りに行くとは限りません。
インターハイに出場すると、さらに全国の強豪が揃ったトーナメントが始まります。
上を見ればきりがありませんし、全国チャンピオンでさえ全ての試合で勝ち続けるわけではありません。
そこで大切になるのが「今ここ」と向き合うことです。
今この瞬間には、他人との比較や過去への後悔、未来への不安などはありません。
不安や悩みなどの感情は、全て自分の心が生み出している幻のようなものです。
今この瞬間の自分をしっかりと見つめる自己観察を行うと、「ここではないどこか」=「目標」を目指しながらも、落ち着いた気持ちを保つことができます。
今この瞬間起きていること、あるいは出た結果については一喜一憂せず、淡々と受け入れる姿勢を保つことが大切です。
参考:時間を味方につける!ソフトテニスが上手くなる「超時間術」!
終わりに
「今ここ」と「ここではないどこか」は車の両輪のようにセットになって働くものです。
遥か遠くを夢見ながら日々を生きることで、今この瞬間が充実する。
今この瞬間を見つめる視点を持つことで心が良いコンディションに保たれ、目標達成をサポートする。
理想の自分をイメージする「目標設定」と、今この瞬間を見つめる「自己観察」。
これらの2つをバランス良く実践しながら舵を切ることは、ソフトテニスの充実はもちろん人生時間の充実に繋がるはずです。
まとめ
●今この瞬間の心のあり方が大事な一方で、人の心は量ではなく変化に反応する
●ソフトテニスの目標達成
「ここではないどこか」=「目標設定」→目標達成している理想の自分を臨場感豊かにイメージする
「今ここ」=「自己観察」→今この瞬間に意識を向けることで、自分の心が生み出す不安や悩みが和らぐ
●「今ここ」と「ここではないどこか」は両輪。両方をバランスよく見つめることで人は真価を発揮できる