本記事では、試合で使える前衛ローボレーの裏ワザ的なテクニックを解説しています。
ローボレーは名前の通り低い打点で打つボレーのこと。
ローボレーはコートの中間地点、サービスライン付近で打つ場面が多いでしょう。
今回考えてみたいのは、一般的なローボレーとは少し違うテクニック。
試合展開を有利にできるようなローボレーを考えてみたいと思います。
前衛のローボレーの基本
ローボレーは「低い打点のボールをノーバウンドで打つショット」のことを指します。
ネット前について打つ通常ボレーに対して、ローボレーはネットから離れた位置で打ちます。
また、高い打点で打つボレーをハイボレーと言います。
ローボレーを打つ場面
試合でローボレーを打つのは、以下のような場面が多いでしょう。
■ローボレーを打つ場面
・前衛がサーブを打った後、サービスライン上にいるとき
・前衛がレシーブを打った後、サービスライン上にいるとき
前衛はサーブレシーブを打ったあとネット前につくまでには中間地点(サービスライン)で一度止まります。
上に挙げた場合以外にも、後衛選手が前に出ることもありますし、ダブル前衛の場合はペアの2人ともがローボレーをラリーの中心とします。
このように使う場面は様々ですが、ポジションや陣形に関わらずローボレーの技術そのものは違いありません。
ローボレーの特徴
ソフトテニスのプレーはルール上「ネットを越えて、相手コートに入るようにボールを打つ」ことを前提とします。これはストロークでもボレーでも同じです。
ローボレーの場合はさらに「ネットに近い、サービスライン付近で打つこと」「打点が低いこと」という2つの特徴が加わります。
つまりローボレーは「ネットに近く、低い打点からネットを越して、相手コートに入れる」のが基本になります。
このようにローボレーの性質を考えると、威力のあるボールを打つのが難しいことが分かります。
そのためローボレーには「守り」のイメージがあるでしょう。
実際に前衛選手がローボレーを打つときには、後衛の前に返すだけというシーンが多く見られます。
ローボレーのイメージを変えてみる
ネット前で低い打点のボールを打つときには、スピードのあるボールはどうしても打ちづらくなります。
しかしローボレーは見方を変えれば攻撃的なショットになり得ます。
「ローボレー=守り」というイメージを何となく抱いている方は、そのフレームを変えてみましょう。
フレームとは「考え方の枠組み」のこと。自分がある物事を見る時に自然と使っている心の価値判断基準です。
ソフトテニスのフレームが変わる例としては、「ダブル前衛」が挙げられるでしょう。
ご存知の方が多いとは思いますが、ソフトテニスの試合は前衛・後衛に分かれる雁行陣が主流です。
ペアの2人ともが前に付くダブル前衛が活躍し始めたのはルール改正の影響もあるでしょう。
しかし旧ルールからカットサーブは打てましたし、2人が前に出る陣形が禁止されていた訳ではありません。
「ソフトテニスは雁行陣が基本」というフレームがあったために、その枠組みの外側にある戦術が盲点になっていたと言えるでしょう。
これまで一般的だった枠組みの外側に、新しい可能性があります。
このことは陣形の面だけでなく、ソフトテニスのプレー全体について言えることです。
「ローボレーは守りのショット」というイメージもその一つ。
ローボレーは後衛同士のラリーよりも早いテンポで打てるため、上手くコントロールできれば攻撃的なショットにもなり得ます。
これまで多くのプレーヤーが実践してきたオーソドックスなプレーは身につけておく方がいいと思います。
一方で、そのようなプレーが本当にベストかどうかは分かりません。
戦術、狙うコース、回転など、これまでのフレームに疑問を持ち、改善できないか想像力を働かせると、面白い発見があるかもしれません。
参考:ソフトテニス史上最強!?超一流前衛&後衛の動画でイメージトレーニング!
参考:【ソフトテニス】脳科学で上達!ローボレーのコツと練習メニュー!
試合で使える技術「カットボレー」
ソフトテニスのローボレーで使えるのは「カットボレー」です。
ローボレーの場合は「カットローボレー」となるでしょうか。
これらはカットサーブやカットストロークに倣った名前です。
カットローボレーは名前の通りローボレーを打つときにスライス回転を掛けるショットです。
タイトルにある「裏ワザ」は、ドライブやフラット系の回転が基本のローボレーをスライスで打つことにあります。
「カットボレー」は前衛のセオリーとはやや外れるプレーですが、マスターすれば有効なテクニックとなります。
ソフトテニスにおけるカットの効果
ソフトテニスでカットというと「カットサーブ」のイメージが強いかと思います。
カットサーブの独特な軌道やバウンドを見ると、その威力が感じられると思います。
最近ではシングルスを中心に「カットストローク」と呼ばれる技術が広がりを見せています。
ソフトテニスでの攻撃的なショットは「ボールが速い」「コースが厳しい」というのが一般的です。
これらに加えて「バウンドが低い」というのも強力な武器になります。
プレーヤーの真正面に打たれたボールであっても、強烈なバックスピンがかかったボールを正確に打ち返すのは困難です。
ソフトテニスにおける「バウンドが低い」ことの強さは、カットサーブからも明らかです。
強力なショットにはスピードボールを連想しますが、回転による多彩なボールの変化が特徴のソフトテニスではカットの有効性は見逃せません。
カットストロークも同じで、キレのあるシュートボールとは違った効果があります。
【カットボレー】ローボレーをカットで打ってみよう!
ローボレーでもカットを掛けて打ってみましょう。
後衛前に返すだけだったローボレーが、相手にとってやっかいなボールに変わります。
「カットボレー」では、カットサーブやカットストロークのように大きくラケットを振る必要はありません。
練習方法は後述しますが、インパクトの瞬間にラケットをスライス面で当てれば自然と滑るような回転のボールが打てます。
カットに慣れてボールタッチに自信がある選手は、強烈なスピンを掛けたカットボレーも打てるでしょう。
感覚を掴めばボレーであっても回転数の多いカットを打つことはできます。
「カットボレー」の練習方法
ここからは、カットボレーの具体的な練習方法をご紹介します。
始めにソフトテニスの技術の基本を確認しておき、その後に練習メニューを紹介します。
ソフトテニス上達の本質
ソフトテニスのショットの本質は「感覚」です。これは言い換えれば「慣れ」のことです。
カットボレーが上達も感覚が重要であることを前提にしておくとスムーズになります。
脳はもともと繰り返しによって自発的に学習する性質があります。
反復練習によって、自然と脳内では神経回路のネットワークが強化され、技能のレベルが上がります。
ソフトテニスの技術も基本的には何度も繰り返し練習すれば脳が勝手に学習します。
上達を妨げる原因として多いのは「フォームを考えること」。
体の感覚が求められる技術は、考えない方がむしろ上達のスピードは上がります。
(参考:ソフトテニスは「考えない」方が上手くなる!?センスが覚醒する練習法!)
カットボレーの練習方法
ここからはカットボレーの具体的な練習方法を見ていきましょう。
脳が反復練習で学習することを考えれば、上手くなりたいショットを何度も打つと上手くなります。
■ショット上達の基本は繰り返し
・ストロークは何度もストロークを打つと上手くなる
・サーブは何度もサーブを打つと上手くなる
カットローボレーも同じです。
基本は「カットを掛けてローボレーを何度も打つ」と上手くなります。
練習メニュー①「カットローボレー練習」
カットを掛けてローボレーを何度も打ちます。
バックスピンを掛けますから、ラケット面が上向きで、ボールの下をこするような打ち方になります。
ボールの回転をコントロールするために大切なのは「タッチ」の感覚です。
ラケット面がボールに触れたときに、細かなラケット操作ができるような感覚を磨いていきます。
ボールのタッチを良くするためには、ボールを感じることが大切です。
ボールをよく見て、インパクトの感触をしっかりと感じとるようにしましょう。
この練習を繰り返せば五感を通じてボールの感覚が脳に書き込まれていきます。
ボールを打つときの感覚を意識して覚えようとする必要はありません。
ボールに意識を集中して打つことを繰り返すと、脳が自然と学習してくれます。
慣れていない打ち方をすると始めは上手くいきませんが、気にせず続けてください。
練習メニュー②「カットストローク練習」
ワンバウンドのストロークをカットを掛けて打つ「カットストローク」での練習です。
カットローボレーを打つ練習よりも、カットストロークの練習から始める方が取り組みやすいと思います。
ワンバウンドの上げボールの方が余裕を持って打つことができるからです。
ストローク練習や乱打でカットを掛けたストロークを打ちます。
乱打の場合は相手が打ちやすいボールでラリーをすることが多いですから、必要があれば「カットを練習したい」と伝えておくといいかもしれません。
ソフトテニスの練習メニュー「乱打+α」で楽しくストローク力UP!で紹介しているように、半面シングルスとして乱打をすると、カットも積極的に使えます。
試合はゲーム性があり相手が嫌なボールを打つのが基本で、練習は相手が打ちやすいボールで調整する場合もある。
練習の意図によって使い分けるといいでしょう。
カットの軌道に慣れないと始めはコントロールが難しいですが、ボールをよく見て打つことを続けると次第に慣れてきます。
ボールに集中することで脳内でボールの軌道のパターンが自動的に学習されるからです。
飛んでくるボールやインパクトの瞬間はもちろん、自分が打ったボールもしっかりと見るようにしてください。
飛んでいくボールを見ることでイメージと現実のショットのズレが修正されていきます。
練習メニュー③「イメージトレーニング」
イメージトレーニングを行うとショットの上達が早くなります。
実際に体を動かしていなくても、脳がリアリティを感じるイメージは体に影響があります。
プラシーボ効果(偽薬効果)の例では、「薬だ」と信じて飲んだ人にはニセモノの薬であっても心理的な治癒効果が確認されます。
人間は事実がどうかではなく、脳内に作られた信念に向けて動きます。
想像の世界では思い通りのプレーができ、そのイメージは現実のパフォーマンス向上に繋がります。
ソフトテニスのイメージトレーニングの基本は以下の2つです。
■ソフトテニスのイメージトレーニング
①ソフトテニスが上手い人のプレーを見る
②自分の理想のプレーを何度もイメージする
カットでのローボレーは、全日本や国際大会レベルの前衛プレーヤーが実際に使っています。
特にダブル前衛の選手には必須のスキルだと言えるでしょう。
またシングルスではカットストロークの技術が求められます。
ストロークとボレーには違いもありますが「ラケットでボールをコントロールするタッチの感覚」は共通しています。
トップ選手が後衛・前衛両方のプレーが上手いことの背景には共通の感覚が磨かれていることが大きな理由でしょう。
ラケットでボールをコントロールする感覚が磨けるのが、先ほど説明した「ボールに集中してボールを五感で感じる」方法です。
この方法を繰り返すだけで、脳が自動的に「ボールを打つ」という動作のプログラムを構築していきます。
カットストロークのイメージを掴んで練習することがカットボレーの練習に繋がります。
参考:「イメージ」の力!ソフトテニス上達の2つ目のポイントを徹底分析!
参考:【ソフトテニス×脳科学】ボレーの精度を上げる「タッチ」とは?
まとめ
●ローボレーの裏ワザは「カットボレー」
●ソフトテニスは回転による多彩な変化があるスポーツ
●ドライブ系のショットがメインとなっているがカットは「バウンドが低い」という強みがある
●ローボレーはネットに近く打点が低いため、強打は難しい
●ローボレーにスライス回転を掛けることで攻撃的なショットになる
●カットローボレーの練習メニュー
①「カットローボレー練習」=ボールをよく見てスライス回転のローボレーを打つ
②「カットストローク練習」=ワンバウンドのストロークをカットをかけて打つ
③「イメージトレーニング」=トップ前衛やシングルスのプレーを見てカットのイメージを作る