“You are beutiful” (「あなたは美しい」)プロジェクトと呼ばれるものがあります。
写真家の方が人物の写真を取る際、2つの場合で撮影します。
①普通に写真を撮る
② “You are beautiful” と言って写真を撮る
説明を理解するだけではどのような内容なのか、イメージが湧きにくいかと思います。
百聞は一見に如かずで、実際に取られた写真をぜひご覧ください。
英語のサイトですが、写真を見るだけでもその意味が分かります。
参考:『18 people’s faces before and after hearing one powerful word』
→https://www.revelist.com/viral/you-are-so-beautiful-photo/5767/3/5
(正確にはこちらのサイトの写真では “You are so beautiful” と声をかけたようです。)
この記事では、上記リンクで見られる写真をヒントに、ソフトテニスの練習メニューの効果が上がる秘訣を解説します。
ソフトテニスの練習メニューのポイント
先ほどリンクを張っていたサイトはご覧になりましたか?
写真を見た瞬間に分かるように、”You are beautiful” と言われた後の写真は内側から輝いているような表情のものばかりです。
写真の中に、ソフトテニスの練習メニューを格段に向上させて、上達するためのヒントがあります。
美しいから「美しい」と言うのではなく、「美しい」と言われることで美しくなる、そんな印象を抱かせる写真が並んでいます。
恐らく、ただ「美しい」という言葉をかけるだけではなく、撮影者の心からの賛辞というところも大きいかと思います。
“You are beautiful” プロジェクトの写真は、教育やコーチングなどの面で示唆に富むものだと思います。
「美しい」と言われた人の写真がどれも輝いているのを見ると、否定的な言葉を掛けられた人がどのような影響を持つか、想像に難くありません。
それが、「勉強」や「スポーツ」に関することだとどうでしょうか?
今勉強ができたり、スポーツが上手かったりすることとは関係がありません。
「あなたは素晴らしい。必ずできる」と心から周囲に肯定された人は、写真に見たような変化が起きることでしょう。
「自分にはできる」という心理的な面が、現実の人の在り方に大きな影響を与えることは事実です。
以下に2つの例を挙げてみます。
2つの例に共通することは「勘違いや思い込みであっても、人の思考は現実に影響を与える」という点です。
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果は、他者からの期待の通りになるという心理的な働きのこと。
名前の由来は、自分が作った女性の彫刻に恋をした男・ピグマリオンの思いが通じ、彫刻が人間の女性になるというギリシャ神話です。
この効果は体験的にもありそうに思えますし、教育心理の実験でも確認されています。
実験では、小学校のクラスを対象に知能テストを行いました。
その後担当教員に「この子たちは今後成績が伸びます」という情報を与えます。
この情報は誤りなのですが、教員が「この子は成績が伸びる力があるのだ」と期待して接します。
そうすると本当に成績が伸びるという結果が出たそうです。
こちらのピグマリオン効果の実験には疑問の声もあるようですが、他の類似した例を見ると、理論としてあり得るだろうと思われます。
ちなみにピグマリオン効果の反対を「ゴーレム効果」と呼ぶことがあります。
ゴーレムは魔術によって動く怪物とされていますが、その効果が消えて元の土くれに戻ってしまうことを表したのがゴーレム効果です。
つまり心理的効果によって能力が下がってまう場合のことを意味しています。
プラシーボ効果(偽薬効果)
プラシーボ効果をご存知の方も多いことでしょう。
薬に似せた偽薬を与えても、それを飲む本人が「効果がある薬だ」と信じて飲んだ場合には心理的な治癒効果が認められます。
プラシーボ効果は実験で何度も確認されているため、効果があるのかないのかという議論は既にほぼないように思われます。
心理的な治癒効果はあるという前提で、どうすればその効果を最大化できるのか、という方向に視点がシフトしているのではないでしょうか。
さて、「ピグマリオン効果」と「プラシーボ効果」の2つの心理的効果をご紹介しました。
先に書いた通りどちらも被験者は騙されていますが、本人が思い込んだ通りの効果を得ています。
私たちが持つ信念が事実かどうかとは関係がなく、人が本気で確信したことは現実に影響します。
これらの事例を広げて考えると、能力を高めたければ「自分は凄い!」と思うだけで良いことになります。
ソフトテニスが上手くなるためには、「自分はソフトテニスが上手い!」と思えばいい。
チームが強くなるためには「君はソフトテニスが上手い!」と日々伝えればいい。
ただし、実験では被験者が本気で信じる状況にあったため、自分でイメージを作る時にはテクニックが必要です。
理想はセルフイメージについてチームが理解した上で、お互いを心から褒めたたえ合う環境を築き上げていくことです。
セルフイメージについては、水泳のマイケル・フェルプス選手の例からも学べます。
・脳が思い描いたイメージは現実に影響する
・「できる」「できない」は思考が決める
・セルフイメージを変えれば日々が変わり始める
参考:【水泳】マイケル・フェルプス選手に学ぶソフトテニス上達のコツ!
ソフトテニスの練習メニューの効果を上げる方法!
ここまで、勘違いや思い込みでも、心理的な働きが重要な意味を持つことを確認しました。
日々の練習メニューの効果を高める秘訣はシンプルです。
■練習の効果を上げるポイント
①自分を褒めること
②チームで褒め合うこと
単純なようですが、これらを徹底できれば、自分のモチベーションやチームの空気は別物になります。
日々の練習の効果は上がり、試合では土壇場で最高のパフォーマンスを披露するプレーヤー(チーム)となるでしょう。
冒頭でご紹介した、写真をもう一度思い出してみてください。
ほんの一言“You are beautiful”と語り掛けられた人は、一瞬前とは全く違う雰囲気だったはずです。
日々、ネガティブな言葉を一切言わず、チームがお互いに自分たちをポジティブな言葉で肯定し合ったら一体どこまでいけるでしょうか?
習慣的に実践すれば、その効果は写真に見られた変化の比ではないでしょう。
それでは実践ワークを見ていきましょう。理解するだけでなく、実践することで始めて効果があります。
常にポジティブな「セルフトーク」を行う
ソフトテニスの練習メニューの効果を上げるには、常にポジティブなセルフトークを行います。
セルフトークは自分が使っている言葉のことで、声に出していないものも含みます。
言葉はイメージや情動を引き起こします。
人間は一日に数千回~数万回セルフトークを行うと言われています。
セルフトークは意識して変えていかなければ、ネガティブなものが中心です。
数万回ものセルフトークがそのたび言葉と結びついたイメージや情動を引き起こす。
セルフトークをポジティブなものに置き換えていくのが、ソフトテニス上達には不可欠です。
まずネガティブな言葉を減らすことから始めて、そこからよりポジティブな言葉を使う、というステップを踏みます。
「私はソフトテニスが上手い!」
「私はソフトテニスの試合で優勝して嬉しい」
「私は運動神経バツグンだ!」
このような肯定的な言葉だけを使います。
声に出しても、頭の中で唱えても構いません。
ポジティブな言葉を唱えるだけでソフトテニスが上手くなる。
こう言われると違和感があるかもしれません。
しかし思い込みや勘違いでも効果があるのは前章で確認した通りです。
ソフトテニスの練習・試合中にポジティブな声掛けをする
自分だけでなく、周囲の人に対してもポジティブな言葉で接するようにしてください。
相手のためはもちろんですが、自分のためにもなります。
人に掛ける言葉であっても、脳内ではイメージが湧き上がるからです。
ポイントは「いいイメージが湧く言葉」を使うこと。
ソフトテニスの練習や試合で良いプレーを褒めるのは普通です。
ミスをした時にも、ポジティブなイメージが湧くようにしましょう。
「できていること」や「これからしたいこと」にフォーカスします。
前衛がミスしたとき
前衛がボレーやスマッシュをミスしたときは次のような言葉はどうでしょうか?
・「動きは合ってる」「狙いはよかったよ」
→前衛がミスをするということは、コースに入っているということです。
・「次は入る!」
→過去のプレーは変わらないので、次の良いプレーに繋げます。
後衛がミスしたとき
後衛がストロークなどをミスしたときは、どうでしょうか。
・「ナイスボール」「いいボールだった」
→これは白帯や僅かなアウトなど、惜しいミスの場面です。
プレーの出来ているところにフォーカスしましょう。
相手のポイントにはなるものの、プレーの質が高いことには変わりありません。
・「次は入る!」「次一本!」
→後衛も重要なのは次のプレーです。
既に終わったポイントは気にせず、これから良いプレーができるようにイメージを修正します。
上記の言葉はあくまで例なので、場面に合わせてコミュニケーションしてください。
日々の練習メニューでも、試合本番でも基本は同じです。
「ポジティブなイメージ」というポイントさえ押さえておけば、自然と習慣になります。
いつも同じミスをしていても、なんの根拠もなく「次はできる!」でOK。
「ネットが多いから気を付けよう」などの言葉は「ネット」のイメージが喚起され、ミスしやすくなります。
選手がミスをすると怒鳴ったりする指導は、ミスをより強く選手の脳に刷り込むため逆効果です。
勘違いでも成績が上がったり、体調が良くなったりするわけですから、選手に「できない」というイメージを刷り込んでいいはずがありません。
指導理論の以前に、大人同士では怒鳴らないのに中学生・高校生相手なら怒鳴るというのはアンフェア。
もちろん法に触れたり他者に危害を加える場合は、本人が責任を取るべきで、毅然とした態度が望まれます。
ですがスポーツでのミスに怒る理由はありません。
最後にもう一度 “You are beautiful” の写真を思い出してみてください。
思いの力、イメージの力が人間の内側に眠る可能性を引き出します。
できるという自信を持つから後から能力がついてきます。
チーム内でお互いにお互いを肯定し合い、常にポジティブなイメージを強化しましょう。
・イメージは現実のパフォーマンスに影響する
・肯定的なセルフトークで能力が引き出される
・チームでお互いに肯定し合うことが理想
まとめ
● “You are beautiful” と言葉を掛けられた人の写真は内側から魅力が引き出されている
●人間の思考=イメージは現実に大きな影響を与える
●事実ではない勘違いや思い込みでも効果がある
●ソフトテニスの練習メニューの効果を上げるポイントは「いいイメージを持つこと」
●練習中・試合中はの声掛けは「できていること」「これからしたいこと」にフォーカスする
●肯定的な「思い」「イメージ」が人間の最高のパフォーマンスを引き出す