本記事では、ソフトテニスの試合での前衛の戦術を解説しています。
ソフトテニスのプレーにおいて最も重要なのは「技術」でしょう。
技術はボールコントロールの感覚で、これがなければ試合でラリーができません。
身に付けた技術を試合で最大限活かすために、適切な戦術が必要です。
頭で考えすぎると体の直観的な動きが鈍るため、戦術のイメージを掴むくらいでOKです。
ソフトテニスの前衛戦術の基礎
【基本編】でも解説したことをおさらいしておきます。
ソフトテニスの戦術は経験
ソフトテニスの戦術で重要なポイントは「経験」です。
「クロス展開」「ストレート展開」などの戦略を練るのもいいでしょう。
ですが、常にプレーヤーとボールが動き続けるソフトテニスのゲームでは直観的な判断能力が大切。
直観は当てずっぽうのことではありません。
直観とは「過去の経験によってもたらされる、理論を超えた無意識による判断」です。
直観による判断は本人にも根拠が分からないため、プレーで頼るのは気が引けるかもしれません。
しかしスポーツの体の動きは、むしろ直観に任せる方が上手くいくことが多くあります。
直観による体の動きは、日常生活で歩くだけでも使われています。
人間が歩くときには、体のバランスを常に取りながら、周囲の歩行者や自動車の動きに対応して動いています。
重心の取り方などを逐一考えてできるものではありません。
それでは、ソフトテニスで直観としての戦術を身に付けるにはどうすればいいのでしょうか?
方法は単純で「ゲームを繰り返し経験すること」です。
脳は繰り返しによって自動的に学習していきます。
始めのうちは上手くいかなくても、ゲームでのトライ&エラーのデータから脳が自発的に学んでいきます。
「どの場面で、どう動けばいいのか、直観的に分かる」。
このような体感は、先ほどの歩く例でも同じことです。
赤ちゃんは何度もつかまり立ちを繰り返し、歩く練習をして、次第にスムーズに歩けるようになります。
曖昧なようですが、このような感覚がソフトテニスの戦術のコアにあります。
前衛の役割とは?
前衛の基本的な役割を見ておきましょう。
ソフトテニスの試合での前衛の役割は主に以下の2点です。
①ボレー・スマッシュを決める
②相手にプレッシャーを与える
ネット前に着くまでのサーブ・レシーブも重要ですが、ここではネットプレーに焦点を当てます。
【基本編】では試合における前衛の意識=マインドの基本でしたが、今回はもう一歩先へ行くために必要なことを考えてみたいと思います。
・ソフトテニスの戦術のコアは経験
・繰り返しゲームを経験することで、記憶に基づく直観が磨かれる
・前衛の役割は「ボレー・スマッシュ」と「相手へのプレッシャー」
参考:【ソフトテニスの】脳が自動で戦術を学ぶ!?試合巧者になるプロセス!
ソフトテニスの前衛戦術【応用編】
前衛の戦術について考えていきましょう。
前衛戦術で身につけたいポイントは以下の2つです。
①動いてはいけない時は動かない
②ボールに触れずに点を取る
順番に確認していきましょう。
戦術①動いてはいけない時は動かない
前衛の戦術【応用編】、1つ目のポイントは「動いてはいけないところで、動かない」ということです。
前衛はポイントを取ることが期待されますし、動くことによってプレッシャーをかける役割もあります。
ですが動き過ぎると相手選手に楽をさせることになります。
ダブルスの中での前衛の役割
先ほど見た通り、前衛の基本の役割はボレーやスマッシュを打つことでしょう。
前衛は積極的に動いてポイントするイメージがあると思います。
しかし、前衛がポーチに出ることをもう一度よく考えてみてください。
ソフトテニスで前衛・後衛に分かれる雁行陣では、前衛がポーチに出るのは陣形が崩れることを意味します。
前衛がポーチに出て逆のコースを突かれることは、即座に相手のポイントに繋がります。
極端な話、ポーチに出なければ2人でコート全体をカバーでき、相手選手がオープンスペースに打つことはありません。
「ポーチに出てボレーを決める」「プレッシャーをかける」、これらは前衛の重要な役割です。
ですが相手プレーヤーが簡単にポイントできる展開を作ることでもあります。
そこで大切なのが「動くべきでない時は動かない」ことです。
一見すると【基本編】で述べた「抜かれることを気にしない」と相容れないテーマです。
これら2つのスタイルを場面ごとに使い分けることができれば、前衛は相手プレーヤーにとって厄介な存在になります。
攻めと守りのバランスを調整する
前衛がポーチに出てボレーしたり、ロブを追ってスマッシュを決める。
相手後衛もストロークのコースを塞がれると「相手前衛に取られるかもしれない」という心理になります。
しかし先ほどにも書いた通り、ポーチに出るということは相手の得点のチャンスにもなり得ます。
後衛同士のラリーで有利な展開を作るよりも、前衛パッシングでのポイントの方が相手にとっては楽です。
なので「相手がパッシングを打って得点したいタイミングでは動かない」ことが、より完成度の高い前衛のプレーだと言えます。
「積極的に動いてポイントすること」
「要所で守って相手に付け入るスキを与えないこと」
一見矛盾する攻撃・防御の2つを、試合の流れの中でバランス良く保ちます。
ポーチとディフェンスを同時に行うことはできませんから、ラリーの展開や、試合全体の流れから感じ取る力が必要です。
とは言っても、頭で考えて行う訳ではありません。
前衛の攻守のバランスは、大枠の方向性を押さえておけば試合中には考える必要がないのです。
プレー中の動きはボールに意識を集中し、無意識の自動的な体の動きに任せる方がパフォーマンスが上がります。
ラリー中はボールもプレーヤーも動き続ける中で、瞬間的な判断に任せる必要があります。
前衛の「動かないプレー」は、本能的に動きたくなる(ポーチに出たくなる)展開で、意識的に自動的な動きの方向性をコントロールすることで可能になります。
例えるならば、車の運転自体は自動操縦の精密な動作に委ねながらも、向かうべき目的地は自分の意志で常にコントロールされている状態です。
ボールに集中して感覚的にプレーすることと、自分を客観的に観察してモニタリングすること。
このようなプレーはすぐに身につく訳ではなく、経験を通じて「攻撃・守備」のバランスを維持していきます。
ここに書いたプレーは体感的なもので、頭で考えすぎるとスムーズに動けません。
プレーを意識して迷うようであれば、一度全てリセットして「ボールだけに集中」してみてください。
余計な雑念が消えて頭の中がクリアになります。
直観的な判断も戦術の1つ。プレー中には頭で考えない方が、体がよく動きます。
戦術②ボールに触れずに点を取る
前衛がボレーやスマッシュを打たずに「立っているだけ」「動きだけ」で点を取る。
直接のポイントに繋がらなくても、相手プレーヤーが弱気な配球になるだけでゲームは有利になります。
これらは簡単に言うと、前衛の「存在感」に相手が感じるプレッシャーから起こります。
特に後衛が「どこに打っても取られる気がする」と感じると、ボールは精度を欠き、ますます相手側のペースにはまります。
「存在感」だけで点をとる前衛。
このようなプレーヤーになるにはどうすれば良いのでしょうか?
それは「技術」と「自信」が徹底的に高められた結果生まれてくるものだと考えられます。
裏返せば「存在感」そのものを練習して鍛えることは難しいとも言えるでしょう。
技術面とメンタル面に分けて考えてみましょう。
前衛の技術による「存在感」
技術による前衛の「存在感」。
完成度の高いプレーによって、相手プレーヤーが気にしてしまうということです。
■前衛のポジション&タイミング
前衛の動きは「ポジション」と「タイミング」の2つが大切です。
以下2つをまとめて単にポジションと書きます。
相手プレーヤーが前衛の存在を気にする時には、ポジションは重要な要素でしょう。
前衛は相手プレーヤーが打つコースを押さえるように動きます。
つまり前衛のポジション良いと、相手が打てるコースが的確に塞がれている状態。
こうなると乱打などのように自由に打つことはできなくなります。
自分がボールを打つときに「動いてくるかな」とか「取られるかも」と一瞬でも迷いが出ると、ベストなショットを打つのが難しくなります。
これが、ポジション&タイミングによる存在感です。
■前衛のボレー&スマッシュ技術
前衛の存在感が高まるのは、ボレーやスマッシュの技術も関わているでしょう。
もしソフトテニス初心者がたまたま絶妙なポジションに立っていたとしても、プレッシャーは感じません。
初心者でなくてもボレー・スマッシュがミスばかりの選手でもやはり同じです。
このような状況下で、相手プレーヤーは「決められる!」という感じがしません。
前衛のトップ選手であっても、全てのコースが読める訳ではありません。
しかし自分が取りに行ったコースは確実に決める技術があります。
ボールが綺麗にボレー&スマッシュで決められると、そのプレーのイメージは相手に刻まれるでしょう。
ネットプレーの高い技術力が、相手にとっては警戒の対象となるはずです。
また、ハイレベルな前衛はコースが予測から外れても、即座に反応します。
本人の周囲に打たれたボールであれば、柔軟に対応ができるでしょう。
ボレーやスマッシュのラケットワークができ、条件反射でスピーディなプレーが可能だからです。
こうなると、相手後衛としてはどのコースも取られるという感覚になりやすいでしょう。
前衛の自信による「存在感」
前衛が「自分はポイントを決めて当然」と確信してプレーしているとき、その雰囲気は伝わるものです。
人間は周囲の人が喜んだり悲しんだりしている時に、自然と同調し、雰囲気を感じ取ります。
今目の前にいる人の機嫌が良さそうだor悪そうだというのは、何となく察するものです。
前衛が揺るぎない自信を持ち、それに相応しい技術があるとき、相対するプレーヤーは気圧されてしまう場合があります。
これが「存在感」によって試合で優位に立つ前衛の資質でしょう。
自信や存在感という言葉は曖昧ですが、反対の場合をイメージすると分かりやすいでしょう。
反対とは相手の前衛プレーヤーが緊張して、自信なさ気にプレーをしている場合です。
相手が弱気になっていると、試合をしている側としては楽にボールが打てますよね?
もちろん意図的に相手を委縮させるわけではありません。
相手選手のプレーを妨害するのはルール違反ですし、スポーツのフェアネスの精神にも反するものです。
あくまで自分の心身のパフォーマンスを最大限高めた結果として、前衛の存在感が備わります。
・応用的な前衛戦術は「動き過ぎない」「存在感」の2つ
・前衛がポーチに出るとオープンスペースができ、相手のチャンスにもなり得る
・攻めと守りのメリハリをつける
・ボールにタッチしていない時間の前衛の動きが存在感に繋がる
参考:前衛の奥儀!ボレーの「隠れた技術」とは?【ソフトテニス】
参考:【ソフトテニス×脳科学】ボレーの精度を上げる「タッチ」とは?
まとめ
●前衛の役割の基本
①ボレー・スマッシュを決める
②相手にプレッシャーを与える
●一歩先のレベルの前衛になるためには
①動いてはいけないところで動かない→「無意識の自動調節」と「意識のモニタリング」をバランスよく働かせる
②ボールに触れずに点を取る→「技術」と「自信」を徹底的に高める