本記事では、ソフトテニスの後衛ストローク戦術の【応用編】を解説します。
こちらの内容はラリーの中心となるものではありません。
【基本編】で提案したような、オーソドックスな試合運びができることを前提としています。
技術が身に付き試合でもストロークが打てるようになった段階で、よりハイレベルなプレーへと進むための参考になれば幸いです。
後衛の技術&戦術のコア
具体的な戦術に入る前に、後衛ストロークの技術・戦術の中核となる部分を確認しましょう。
始めに、ストローク戦術について本章のポイントをまとめておきます。
それでは、詳しい内容を見ていきましょう。
後衛ストローク技術のコアは感覚
後衛のストローク技術の本質は感覚です。
何となくボールの打ち方が感じられる、というのがソフトテニスが上手くなった時の体感となるでしょう。
これは日常で皆さんが身に付けているスキルと照らし合わせると実感できることでしょう。
■日常で感覚を使っている例
・自転車のバランスやカーブの曲がり方は、感覚で分かる
・日本語の正しい語順は、何となく分かる
経験に基づいて考えると、ある技能が習得されている時の体感が掴みやすいのではないでしょうか。
人間にはもともと感覚で、何となくできる能力があります。
体を動かすという面では自転車もソフトテニスも同じですから、体の感覚でストロークが行えることも納得できることです。
正確なストロークを打つポイントは感覚でボールに合ったスイングをすることです。
それはボールに集中してストローク練習を行うことで磨かれます。
ボールをよく見てしっかりと意識を向けることで、脳内にボールの動きがデータとして送られます。
脳はキャッチしたデータを元に、自動的にボールに合った最適なスイングを学習していきます。
後衛の試合戦術のコアは「経験」に基づく「直観」
ソフトテニスの戦術のコアにあるのは直観的な判断能力。
直観は当てずっぽうではなく、経験に基づく無意識の処理です。
つまりソフトテニスの戦術を身に付けるためには、繰り返しゲームの経験を積むことが最も大切です。
戦術というと、頭で考えるものだというイメージをお持ちではないでしょうか?
「ストレートロブで相手後衛にバックハンドを打たせよう」
「前衛のポーチが多いから、要所でパッシングも見せるようにしよう」
これらのような高い視点で試合を見つめることは必要です。
試合の流れをイメージしておくことで、直観的な判断の方向性を設定することができます。
ただし頭で考えるのは、ボールを打っていない時間に行うものです。
本稿でご紹介するストローク戦術も、試合中に考えることを薦める訳ではありません。
ゲーム時の大まかなイメージとして参考にして頂ければと思います。
一度ラリーが始まれば、体の直観的な動きに任せましょう。
ボールとプレーヤーが動き続ける中で、ベストな選択を連続して行います。
頭でフォームや戦術を考えていると、目の前のラリーにはついていけません。
ストローク戦術の【基本編】で挙げたポイントはこちらの2つでした。
■後衛ストローク戦術の基本
①自分のベストなショットを打つのが最優先(前衛に取られても良い)
②コースの選択肢は常に複数あることを意識する
基本編・応用編のどちらにも共通することは、後衛の技術が重要だということです。
ソフトテニスの技術とは、自分の思い通りにボールが打てるボールコントロールの感覚です。
詳しくは別の記事に譲りますが、ストロークの技術の習得はフォームを覚えることではありません。
打つボールが毎回違うため、スイングも毎回違った形でなければ正確に打てません。
決まったフォームを意識していると、目の前のボールに合わせたスイングができなくなります。
感覚でボールに合わせた動きができる。
このようなストローク技術が後衛の戦術の前提にあることをまず押さえておいてください。
・後衛ストロークの技術はボールコントロール感覚
・ボールに合わせたスイングが直観的にできるように練習する
・ソフトテニスの試合展開は直観的な判断で行う
・直観は経験=過去のデータに基づく、無意識による情報処理
参考:【ソフトテニス】安定したストロークを打ち分ける「思考法」!
後衛の試合戦術の応用編
後衛のストローク戦術の応用編を見ていきましょう。
前章でも触れた通り、後衛の戦術は優れたストローク技術を前提としています。
後衛ストローク戦術の応用編のポイントはこちらです。
■後衛ストローク戦術の応用
①ラリーでセオリーの裏を突く
②チャンスがあればボレー・スマッシュで攻める
③絶対的な自信を持つ
基本編での内容はセオリーに沿ったベーシックなプレーでした。
基本がベースにあるのが前提で、その上でさらにレベルアップするためのスタイルです。
一つずつ確認していきます。
ポイント①ラリーでセオリーの裏を突く
後衛同士でラリーをするのが一般的ですが、時折セオリーに反したプレーを入れてみると良いでしょう。
セオリー通りのプレーばかりだと、自分の配球を相手に読まれやすくなるからです。
後衛の基本はラリーを続けることです。
前衛プレーヤーはボールにタッチしない場面も多いですが、後衛はストロークを打ち続けます。
ストロークは自分が狙ったコースに打てることが優先で、その上でなるべく前衛に取られないことを目指します。
コースの選択肢は大きく3つ、クロス・ミドル・ストレートがあります。
基本は後衛前へのシュートか、ロブで前衛をかわす展開でしょう。
このようなオーソドックスなラリーができた上で、セオリーに反したプレーを織り交ぜることが有効だと思います。
具体的な展開で考えてみましょう。
■相手に打ち込まれた時に攻める
これは、相手が深くスピードのあるボールを打ってきたとき、思い切ってパッシングを打つ場合です。
深いボールや速いボールを打たれると、余裕を持って返すことができなくなります。
これらの場合は相手前衛の動きが分からなくなります。
これを後衛前にシュートで返すのも選択肢です。
一番安全なコースで言えば後衛前のロブでしょう。
相手前衛が浮き球を待っているとしても、後衛前を追われる可能性は低めです。
相手がナイスショットを打った展開を、相手前衛の視点で考えてみてください。
相手後衛に余裕がない状況だと、ボレーやスマッシュのチャンスなので動きやすくなります。
自分の側に余裕がないということは、相手はチャンスボールに備えた動きをする確率が上がります。
相手プレーヤーの視点から考えると、セオリーに反したプレーが予想外の展開になり得るということです。
もちろん攻められた時は毎回抜いていては相手に読まれます。
後衛同士のラリーをする中で、機を見てパッシングを混ぜると効果的です。
相手前衛の視点では「ペアが攻めている場面でも、下手に動くと相手のポイントになる」ということが頭に刻まれるでしょう。
後は先ほど書いた通り、経験を積んで直観的な判断でプレーしましょう。
ポイント②チャンスがあればボレー・スマッシュで攻める
後衛でもチャンスがあれば前に詰めて、ボレー・スマッシュでポイントできれば大きな武器となります。
このパターンは特に高度な技術が要求されるものでしょう。
ボレーやスマッシュの打球自体がスピーディで攻撃的なこともメリットですが、速いテンポで相手コートに返せることも魅力です。
ダブルスの試合であれば、船水颯人選手、安藤優作選手、内本隆文選手などが試合で前に出てポイントする場面が見られます。
シングルスでも非常に重要なスキルでしょう。
後衛のネットプレーは、主に以下の場面で使えます。
■後衛ネットプレーの場面
・セカンドレシーブを前に踏み込んで打った場面
・チャンスボールで攻めた場面
このような展開なら、後衛プレーヤーもショット後に前に詰めやすくなります。
相手プレーヤーが崩れるようなボールが打てれば、浮き球をネットプレーで決める流れが作りやすいでしょう。
また技術面で説明したボールに集中することがネットプレーでも活かされます。
集中力が高まると直観が働きやすくなり、瞬間的に展開が判断しやすくなるからです。
前に詰めるタイミグや動きを鋭く察知することができるでしょう。
ベースライン付近からワンバウンドで打つ場合には、相手選手が体勢を立て直す時間的余裕があります。
前に詰めて攻めることはその反対で、相手の時間的余裕を奪うことに繋がります。
このパターンを試合で使うためには、後衛選手もボレーボレーなどでラケットワークを磨いておく必要があります。
ポイント③絶対的な自信を持つ
自分のプレーに揺るぎのない自信を常に持ちましょう。
これは戦術というよりはマインドの使い方、メンタルです。
後衛ストロークの【基本編】【応用編】両方の締めくくりとして、その全てのレベルを引き上げる本質ですので触れておきたいと思います。
自信を持つことがなぜ戦術に関係するのでしょうか?
それは、そもそもメンタルな働きがなければ戦術を学び、実践するという行為が生まれないからです。
技術にしても同じことです。効率の良い練習を継続するためには、先にマインドの働きが不可欠です。
人間は「エフィカシー」=「自己評価」通りになると考えられています。
自分の脳が行動を決定し、行動は能力やパフォーマンスに直結します。
つまりエフィカシーを上げればそれに呼応して能力が上がります。
「自信を持つ」とは、エフィカシーが高い状態のことを指します。
「私は試合で常に最高のストロークが打てる後衛だ」という高いエフィカシーを日々強化していれば、脳がそのイメージを現実のプレーとして再現します。
根拠のない自信と言う言葉があります。
「自信を持つ」とは自分の自己評価を上げることですから、他人からの評価に関係なく自由に決めることができます。
プラシーボ効果のように、根拠がなくても人間の思い込みは心身に強烈な影響を与えます。
「自分が打つボールが取られるはずがない!」と自分の中で強い確信を持つ。
脳は自分の体をコントロールする司令塔ですから、自分が本気で確信していることが実際のプレーに影響を与えるのも、人の体の仕組み上自然なことです。
前述の船水颯人選手のプレーなどは、自分のショットに対する強い自信が感じられます。
一流選手の試合での立ち振る舞いを見るとヒントがあるでしょう。
・後衛ストローク戦術の応用編は3つ「セオリーを破る」「ネットプレー」「自信」
・試合のレベルが上がると、相手もセオリー通りのプレーは身に付いているため、裏を突く
・オールラウンドで幅広いプレーを身に付ける
・高い自己イメージでメンタル的なプラスα
参考:ソフトテニスで前衛にも後衛にも不可欠な「エフィカシー」
まとめ
●後衛のストロークの技術は感覚
●ボールに集中することでボールコントロールの感覚が身に付く
●試合での後衛の戦術【応用編】のポイントは3つ
①ラリーでセオリーの裏を突く
②チャンスがあればボレー・スマッシュで攻める
③絶対的な自信を持つ
●技術・セオリーを身につけた上で、あえてセオリーを破ってみる