メンタル理論の基本!ソフトテニス上達のための心理学
今回は、ソフトテニスが上達するためのメンタル理論の基盤となっていることについて説明します。
前衛の心構え、後衛の心構えなどそれぞれに異なる部分はあるものの、基本的なメンタル理論は共通です。
前半はソフトテニスの上達に直接関わらないように思える話ですが、実際にはスポーツのパフォーマンスに直結する内容です。
そもそもソフトテニスが上達する方法を本当に理解しようと思えば、人間の仕組みを理解することは避けられません。
ソフトテニスは人間が行う活動で、その上達のメカニズムは人間のメカニズムに則ります。
もちろん全てを理解することは困難ですが、人の心と体の基本的な仕組みやその活用法を知っておくだけでも有益です。
Contents
ソフトテニスが上達するメンタル理論「認知的整合性」
ソフトテニス上達のためのメンタル理論は、「認知的整合性理論」が基盤になっています。
名称しては「認知的不協和理論」の方が正確でしょう。
「整合性」の方が理論の特徴が掴みやすいため、今回は場合によって名称を使い分けます。
「認知的整合性理論」を簡潔に言うと、「脳(心)は一つの統合された人格や認識を無意識に維持する」という理論です。
内面で矛盾を感じるなどの不協和が生じた場合には、脳は自然とその不協和を解消するべく働きます。
無意識の働きですから、本人にも気が付かないうちに脳は勝手につじつまを合わせます。
具体的な例を上げて見ましょう。
【多重人格】
多重人格者は複数の人格を保有していると考えられますが、一度にいくつもの人格が表に現れることはありません。
【だまし絵】
だまし絵を見ると一つの絵に対して複数の見方がありますが、同時に複数の解釈は維持できません。
「ルビンの壺」であれば、「壺」と「人の顔」という2つの認識を同時に持つことができないのです。
ソフトテニス上達と認知的整合性の関係を述べると、こうです。
「ソフトテニスが上手い自分」と「ソフトテニスが下手な自分」を脳は同時に維持することはできず、どちらか一方しか選べないという原則が成り立ちます。
「ソフトテニスが上手い」という自己評価を絶対に下げなければ、脳は不協和を解消するために、自己イメージに現実のプレーを合わせるしかありません。
以下では「認知的整合性」について、他の例を見ながらもう少し理解を深めておきましょう。
童話「すっぱいブドウ」
童話の「すっぱいブドウ」は、人の心理の例えとしてよく引き合いに出されます。
ストーリーを簡単にご紹介します。
キツネが木になったブドウを食べたいと思うのですが、高いところにあるので取れません。
キツネは「あのブドウはすっぱいからいらないや」と思ってブドウを取るのをやめます。
物語の中で、「ブドウが食べたい」と「ブドウが取れない」という、認識と現実の間にギャップが生まれています。
このギャップが認知的不協和です。脳は不協和を解消しようと自動的に働きます。
そこでキツネ(の脳)が選択したのが、「ブドウが取れない」という現実に合わせた解釈を行い、整合性を保つことでした。
人間関係の心理
私たちは無意識につじつまの合うストーリーを作り、行動を取ります。
人間関係でも相手の表面的な「行動」ではなく「動機」を見るようにすると分かりやすくなります。
表に出てくる言葉や行動より、それを出力している無意識、心理的な働きを観察してみる。
そうすると「なぜこの人はこんなことをするのだろう?」と思う場面で、問題解決には至らなくても説明はつきます。
他人のあら探しや八つ当たりをして、「あなたのためを思って言った」と口にする人がいるとします。
自分本位の言動を取っていて、そこには自己矛盾があるのですが、本人はそれに気が付く様子がありません。
「私は利己心から人に不満をぶつけたりはしない」という認識を維持するために、「これは相手のためなのだ」というストーリーを生み出して信じてしまいます。
このとき外側に現れる言葉の一つ一つは、体における「症状」のようなもので、その内容にはあまり意味がありません。
脳も体の一つの器官であり、心という現象も生理的な現象に近いところがあります。
咳をしている人に「咳をやめろ」と言っても無理な話で、根本の原因である風邪を治さなければ咳は止まりません。
心の働きも同じです。
本人の心理的な要因で人に攻撃をしているのに、表面の言葉の意味に捉われていては、本質的は見えてきません。
参考:ソフトテニスが練習&試合に不可欠!「無意識」の仕組みを学ぼう!
「認知的整合性」をソフトテニスに活かすためには?
「事実」と「解釈」が異なる場合、脳は自動的に両者の整合性を保とうとします。
ソフトテニスが上手くなる場合には「現実」と「イメージ」という言葉に置き換えると分かりやすいでしょう。
現在の自分のプレーのレベルが現実で、自分のプレーに対する自己評価がイメージです。
自分の能力に対する自己評価は「エフィカシー」と呼ばれます。
「自分はソフトテニスが上手い!」という高いエフィカシーが維持されれば、脳はそのイメージとの不協和を解決すべく上達に向けて働きます。
「現実」と「イメージ」の不協和
ソフトテニスが上手くなりたいというイメージがあっても、現実の自分は上手くない。
このとき理想のプレーのイメージと現実の自分との間に認知的不協和が起こります。
脳が取りうる選択肢は2つです。
①イメージを現実に合わせる
→「上手くなれるのは才能がある人だけで、自分は上手くなれっこない」と考えるようになります。
②現実をイメージに合わせる
→「今のプレーは自分に相応しくない。これから正しい練習方法を実践して上手くなる」と、上達に向けた行動を取り、現実に変化を引き起こします。
ソフトテニスプレーヤーが選びたいのは②で、現実の自分のプレーが良くなることでしょう。
そのための方法は実にシンプルで、「エフィカシー(自己評価)を決して下げないこと」です。
認知的整合性をプラスに働かせる方法は、一度学べば心強い味方になります。
「自分にはできる!」というイメージを常に強化して維持していれば、無意識は自動的に現実とイメージとの間のギャップを埋めようとするからです。
理想の前衛のプレー、理想の後衛のプレーというイメージを常に維持します。
ソフトテニスが上手くなるという信念を持っている人は、それに相応しい行動を取り、その信念を実現します。
ソフトテニスが上手くならないという信念を持っている人もまた、それに相応しい行動を取り、その信念を実現します。
上達するための方法が見えてくる
「上手くなりたいと思ったところで、その方法が分からない…」という悩みも、先に自己イメージを高めることで解決できます。
人間の脳にはRAS(ラス)と呼ばれるフィルター機能があり、自己イメージに適う情報しか認識しません。
先ほど、相手を攻撃する人の例を挙げましたが、このタイプの人は相手のマイナス部分にフォーカスし、自分に都合のいい情報以外はカットされて認識できません。
この仕組みに則れば、「私はソフトテニスが上手い」というイメージが作ることで、そのための方法はラスが勝手に集めてくれます。
自己イメージ(エフィカシー)を上げる方法
スポーツのシーンで強調されるのは、映像としてのイメージでしょう。
ソフトテニスが上手い選手のプレーを見たり、自分の理想のプレーを頭に思い描くことは非常に効果があります。
しかしそれ以上に気を付けたいのが「セルフトーク」です。
セルフトークとは頭の中の独り言のこと。
人間は一日に数千~数万回ものセルフトークを行っています。
映像として思い浮かべるイメージよりも、桁違いに回数が多いのがセルフトークです。
人間にとって言葉とは現実に等しいものです。
人の言葉をコントロールすることは難しいですが、自分が日々使う言葉は気を付ければコントロールができます。
日々のセルフトークは自己イメージを決定的に左右し、脳は自己イメージと整合性の取れた現実を創造します。
「私はソフトテニスが上手い!」と習慣的に思っていると、その通りになります。
「私はソフトテニスが下手だ…」と習慣的に思っていると、この場合も、その通りになります。
一度言葉にするだけで物事が変わる訳ではなく、習慣的に使う言葉が現実に変化を引き起こします。
ポジティブなセルフトークを習慣にすると、エフィカシーはどんどん上がります。
効果的なイメージトレーニング
言葉を使った方法に加えてもう一つ、簡単にできるイメージトレーニングをご紹介しましょう。
それは、一日の終わりに「今日楽しかったことと、明日楽しみなこと」を思い浮かべることです。
小さなことでも構わないので、とにかく良いことに意識を向ける習慣を身につけることが重要です。
続けているうちに、ラスが自然とポジティブな事柄を探してくれます。
ソフトテニスのプレーも、その日上手くいったショットの記憶を何度も再現して味わいましょう。
「さすが自分だ」「次はもっと上手くいく」と、好プレーをしている自分のイメージをあるべき姿として脳に刷り込みます。
良くないイメージが浮かんだ場合は、「これは私らしくない。次は必ず上手くいく」というセルフトークを行ってイメージを修正します。
より高い自己イメージを作れば認知的不協和が起き、無意識が自動的に現実とイメージのギャップを埋めてくれます。
参考:ソフトテニス上達のマインド理論から導き出される極地とは?
参考:ソフトテニスの正しいフォーム=言葉の文法?言葉でソフトテニスが見えてくる!
まとめ
●ソフトテニスのメンタル理論の基礎となっているのは「認知的整合性理論」「認知的不協和理論」
●脳(心)は一つの統合された認識しか維持できない
●人は自分でも気が付かないうちに、つじつまの合うストーリーを作ったり、行動を取ったりする
●周囲から見ると明らかに矛盾している場合でも、本人は無意識に「埋め合わせ」をするケースがある
●ソフトテニスが上手い」「自分はソフトテニスが下手」という認識を同時に維持することはできない
●高い自己イメージ(エフィカシー)が維持されると、脳は勝手に現実をイメージの側に近づける